佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

玉川 自然仕込 Time Machine Vintage 江戸流生もと仕込  熟成酒

 本日の一献は「玉川 自然仕込 Time Machine Vintage 江戸流生もと仕込  熟成酒」でございます。

 通常の日本酒の4倍のアミノ酸、3倍の酸という濃醇な味。フィリップ・ハーパー氏の傑作といえるでしょう。アイスクリームにかけても良いほどの甘みと深い味わいがなんとも嬉しい。アテの「酢豚」「新タマネギと海老のかき揚げ」に負けることなく堂々と渡り合うだけのしっかりした味。いや、むしろアテの味をはるかに凌駕した旨みは格別の存在感といえましょう。

 今日は冷蔵庫から出したままの冷たい状態でいただきましたが、明日は燗してみたい。

土曜の夕刻の楽しみ 今日は「青酎」で

土曜の夕刻は僕の生きがい。

少々、大げさですが・・・

幸せな気分になれる時間です。

今日は「青酎」のロックを島唐辛子の風味で。

アテは畑で穫れたてのキュウリを醤油糀風味で。

一時間後にはJ3「ガンバ大阪U-23 VS 北九州」の試合の中継があります。

若い選手の成長が楽しみです。

『聖なる怠け者の冒険【挿絵集】』(フジモトマサル・著/朝日新聞出版)

『聖なる怠け者の冒険【挿絵集】』(フジモトマサル・著/朝日新聞出版)を読みました。

 まずは出版社の紹介文を引きます。

森見登美彦氏による朝日新聞連載小説「聖なる怠け者の冒険」の挿絵を一冊に。フジモト、森見両氏の全作コメントつき。 

 

聖なる怠け者の冒険 挿絵集

聖なる怠け者の冒険 挿絵集

 

 

 先日、文庫本の『聖なる怠け者の冒険』を読み、より登美彦氏の世界を味わい尽くすために単行本の小説を買い求めました。単行本の小説を読み、文庫本と比較して楽しもうと思っていたのだが、本書【挿絵集】が宅配便で届いて気が変わってしまいました。本書を手に取って装丁を見た瞬間に本書に目が離せなくなったのです。あたかも新聞紙で作ったかのようなカバー、表紙にはぽんぽこ仮面の絵、装丁の素晴らしさに一目惚れです。ちなみにこの装丁は名久井直子氏の手になるものである。カバーは新聞紙であるから記事の断片が載っている。広告も載っている。連載小説はなんと『聖なる怠け者の冒険』の第1回がフジモトマサル氏の挿絵とともに載っているという凝りようである。記事には蕎麦処六角でひたすら蕎麦を打ち、食べ、雑魚寝をするという行事「無限蕎麦」が開催されるとの告知、広告には「精力増強、羽化登仙」を謳ったテングブランと小問題にも総力を挙げて調査することを謳う浦本探偵事務所が載っている。「小問題こそ大問題。小問題を嗤う者は小問題に泣く」というフレーズが微笑を誘う。パラパラ頁を捲り、フジモトマサル氏の挿絵の素晴らしさにため息をつき、挿絵に付いたフジモト氏と登美彦氏のコメントを読むうちに、いつしか時間を忘れ最後まで読んでしまった。

 

 どの挿絵も素晴らしいのだが中でも私が気に入ったのは次の三点。

 一枚目は無限蕎麦の六角蕎麦に忽然と姿を現したぽんぽこ仮面。明暗のコントラストが鮮やかで、ぽんぽこ仮面が可愛くもあり不気味でもある。正義の味方のぽんぽこ仮面の心にある闇を見るようで感慨深い。がんばれ!ぽんぽこ仮面。

 二枚目は無限蕎麦の会場「蕎麦処 六角」のたたずまい。「本日無限蕎麦」とかかっている札が良い。こんな蕎麦屋があれば絶対に立ち寄ってしまうに違いない。

 三枚目は木造のアーチ橋に現れたぽんぽこ仮面。ネガポジ反転の技法はジャン・コクトーを彷彿させる。このような木造アーチ橋が京都に残っているのかどうかは不明。どなたかご存じであれば教えていただきたい。ひょっとしたら、昔むかし、牛若丸と弁慶が戦った五条大橋をイメージしているのか?

 

 本書を読み終えた今、私の中で小さな問題が生じている。その問題とは、文庫版『聖なる怠け者の冒険』を出すにあたり登美彦氏は単行本『聖なる怠け者の冒険』をかなりいじくり回したらしい(この点は「文庫本あとがき」に登美彦氏自らが記しているので確実である)のだが、新聞連載されたものと単行本もかなり内容が違うのではないかというものである。挿絵の中に文庫本で描かれた場面とはまったく違うものが散見されるのだ。これはどうしたことかと単行本のあとがきを読んでみた。するとそこには登美彦氏の手によって驚愕の事実が明かされていたのである。それを引用すると

 この新しい『聖なる怠け者の冒険』は、朝日新聞に連載された『聖なる怠け者の冒険』とは、タイトルと主要登場人物は共通しているものの、まったく違う小説である。連載されたかたちで書籍化されるのを待っていてくださった読者の方々には、その点をお詫びしたい。

とある。なんと云うことだ。この世には3種類の『聖なる怠け者の冒険』があるのだ。そんなことは大した問題ではないではないかと仰る御仁もあるだろう。しかし「小問題こそ大問題。小問題を嗤う者は小問題に泣く」のだ。これを放っておいては死に際に悔いを残すのだ。かくなる上は単行本『聖なる怠け者の冒険』を読み、しかる後に朝日新聞掲載『聖なる怠け者の冒険』を読むのだ。どうすれば新聞版を読むことができるだろう。おそらく図書館に通い朝日新聞縮刷版を読むのがよろしかろう。しかし縮刷版を読むには少々視力に不安がある。天眼鏡を購入せねばなるまい。小問題はあらたな小問題を生む。困った小説だ。

いろいろ小問題を私に投げかけた困った本ではあるが、なんとも素晴らしい本でした。この本は手放せない。一生大切にします。なんなら棺桶に入れてもらってあの世まで持っていくぞ。

  

赤花そば

 今日の昼餉は「赤花そば」。

 「赤花そば」は兵庫県豊岡市但東町の赤花地区で作られている在来種。二年前に復活した「焼き畑農法」で栽培されたもの。遙かな昔、縄文時代と同じ蕎麦かも知れないと思いながらありがたくいただきました。

 酒は「諏訪泉 純米吟醸 満天星 もも 生原酒」。蕎麦にあわせて良し。

『街道をゆく 1 湖西のみち、甲州街道、長州路ほか』(司馬遼太郎・著/朝日文庫)

街道をゆく 1 湖西のみち、甲州街道、長州路ほか』(司馬遼太郎・著/朝日文庫)を読みました。

 まずは出版社の紹介文を引きます。

 「湖西のみち」から、二十五年の『街道』の旅は始まった。琵琶湖西岸の渡来人の足跡を確かめ、信長が逃げ込んだ朽木谷を訪ねる。幼いころの著者が遊んだ奈良の「竹内街道」、「私は日本の景色のなかで馬関(下関)の急潮をもっとも好む」と書く「長州路」には幕末を彩った吉田松陰坂本竜馬らも登場する。

 

 

 

「湖西のみち」の書き出しを読むだけで私にも詩がはじまった。
「近江」
 というこのあわあわとした国名を口ずさむだけでもう、私には詩がはじまっているほど、この国が好きである。京や大和がモダン墓地のようなコンクリートの風景にコチコチに固められつつあるいま、近江の国はなお、雨の日は雨のふるさとであり、粉雪の降る日は川や湖までが粉雪のふるさとであるよう、においをこのしている。
「近江からはじめましょう」
 というと、編集部のH氏は微笑した。お好きなように、という合図らしい。
 湖西のみち、竹内街道甲州街道、葛城みち、長州路、それぞれが私を誘っているかのようだ。GoogleMapで路を確認し、訪れるべき所に☆印をつけながら読んだ。
 まずは長州路、画家の風間完氏が菓子を食べ、天井や欄間、軒先を見ながらながら「ちょうどいい」と言った宿『松田屋ホテル』へ泊まってみるか。西郷・木戸・大久保が密議を重ねたという東屋がある庭を散策し、風呂につかりながら維新の時代に思いを致すのも楽しいだろう。
 
 まずは第1巻の目次は次のとおり。
湖西の道
 楽浪の志賀
 湖西の安曇人
 朽木渓谷
 朽木の興聖寺

竹内街道
 大和石上へ
 布留の里
 海柘榴市
 三輪山
 葛城山
 竹内越

甲州街道
 武蔵のくに
 甲州街道
 慶喜のこと
 小仏峠
 武州の辺疆

葛城みち
 葛城みち
 葛城の高丘
 一言主神社
 高鴨の地

長州路
 長州路
 壇ノ浦付近
 海の道
 三田尻その他
 湯田
 奇兵隊ランチ
 瑠璃光寺など
 津和野から益田へ
 吉田稔麿の家
 
 シリーズ43巻のタイトルを整理しておく。第43巻まで全て読み終えるのはいつのことだろう。司馬氏が本シリーズを著し始めたのは1971年のことだという。1996年に急逝され未完のまま絶筆となったから四半世紀をかけていらっしゃる。私が実際にその地を全て訪れるのはまず不可能だ。特に海外に行くことはないだろう。
 1.甲州街道、長州路ほか
 2.韓のくに紀行
 3.陸奥のみち、肥薩のみちほか
 4.郡上・白川街道、堺・紀州街道ほか
 5.モンゴル紀行
 6.沖縄・先島への道
 7.大和・壺坂みちほか
 8.熊野・古座街道、種子島みちほか
 9.信州佐久平みちほか
10.羽州街道佐渡のみち
11.肥前の諸街道
12.十津川街道
13.壱岐対馬の道
14.南伊予・西土佐の道
15.北海道の諸道
16.叡山の諸道
17.島原半島、天草の諸道
18.越前の諸道
19.中国・江南のみち
20.中国・蜀と雲南のみち
21.神戸・横浜散歩、芸備の道
22.南蛮のみちI
23.南蛮のみちII
24.近江散歩、奈良散歩
25.中国・?のみち
26.嵯峨散歩、仙台・石巻
27.因幡伯耆のみち、檮原街道
28.耽羅紀行
29.秋田県散歩、飛騨紀行
30.愛蘭土紀行I
31.愛蘭土紀行II
32.阿波紀行、紀ノ川流域
33.白河・会津のみち、赤坂散歩
34.大徳寺散歩、中津・宇佐の道
35.オランダ紀行
36.本所深川散歩、神田界隈
37.本郷界隈
38.オホーツク街道
39.ニューヨーク散歩
40.台湾紀行
41.北のまほろ
42.三浦半島
43.濃尾参州記
 

『聖なる怠け者の冒険』(森見登美彦・著/朝日文庫)

『聖なる怠け者の冒険』(森見登美彦・著/朝日文庫)を読みました。

 まずは出版社の紹介文を引きます。

 社会人2年目の小和田君は仕事が終われば独身寮での夜更かしを楽しみとする地味な生活。ある日、狸のお面をかぶった「ぽんぽこ仮面」との出会いから、めくるめく冒険の一日が幕を開ける。第2回京都本大賞受賞作!

  

聖なる怠け者の冒険 (朝日文庫)

聖なる怠け者の冒険 (朝日文庫)

 

  

聖なる怠け者の冒険

聖なる怠け者の冒険

 

 クセのある文体、愛すべき冗長、ばかばかしいほどの知性、一部の人にのみ通用するユーモア、登美彦氏は健在である。

 しかしやっかいだ。何がやっかいかというと、この小説を120%楽しむためには『有頂天家族』と『宵山万華鏡』をもう一度読み直さねばならない。その上、新聞連載、単行本、加えてフジモトマサル氏の挿絵集を読まねばならない。単行本と挿絵集は発注した。新聞連載は図書館通いをしなければならないだろう。さらに文庫版の初回に付いていたという四種類のメッセージカードを手に入れればさらに満足度は増すだろう。どうしてくれよう。

 ちなみにメッセージカードは登美彦氏の直筆を印刷したもので、次のようなものらしい。

転がらない石には苔がつく。やはらかくなろう
僕は人間である前に怠け者です
役に立とうなんて思い上がりです
人生いたるところに夏休みあり

 手に入れる方法はあるのだろうか。