佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『旅する風 (新宮晋のポップアップ絵本)』(新宮晋・著/ピーエル出版)

『旅する風 (新宮晋のポップアップ絵本)』(新宮晋・著/ピーエル出版)を読みました。
「風の彫刻家」として有名な造形作家新宮晋さんの最新刊絵本です。ページを捲ると飛び出してくる紙の造形が楽しい。安野光雅さんの絵本にまるで鳥になってヨーロッパを旅するような気分になる『旅の絵本』という鳥瞰的な作品がある。この『旅する風』はまるで風になった気分でいろんな世界を飛び回る。子どもの頃、たまに空を飛ぶ夢をみたものだ。最近、飛ぶ夢をみていない。子どもの頃を少し思い出して心が少し温まった。

 

旅する風 (新宮晋のポップアップ絵本)

旅する風 (新宮晋のポップアップ絵本)

 

 

『Discover Japan TRAVEL 泣ける日本の絶景88』 (文:柏井壽/写真:宮地工/エイムック 3029)

『Discover Japan TRAVEL 泣ける日本の絶景88』 (文:柏井壽/写真:宮地工/エイムック 3029)を読みました。「青」の景色を探しての再読です。ぱらぱら捲っていく中、ついつい柏井さんの文章を読んでしまう。その景色の良さや味わい深さを大げさではなく端的に表した文章に唸る。

 絶景といえば驚くほど雄大な景色や希少な穴場や秘境を想像しがちだが、本書はそうしたものだけでなく、日本人が日々の営みの中で美しい、愛しいと感じるような景色を切り取って見せてくれる。そう、景色から感じるのは日本人が持つ心の美しさなのだ。

 

Discover Japan TRAVEL 泣ける日本の絶景88 (エイムック 3029)

Discover Japan TRAVEL 泣ける日本の絶景88 (エイムック 3029)

 

 

 

2017年11月の読書メーター

 普段の月に比べ先月は極端に冊数が落ちた。こんなことではいかんと思いながらも、他にやるべきことがあればやむを得ない。

 何かを得れば何かを失う。時間は有限なのだとあらためて思う。本の海は制覇するにあまりに広く、人の命はあまりに短い。焦るな~~! (^^ゞ

 

11月の読書メーター
読んだ本の数:4
読んだページ数:968
ナイス数:453

ぱっちり、朝ごはん (おいしい文藝)ぱっちり、朝ごはん (おいしい文藝)感想
特に共感を呼ぶのは「森下典子──漆黒の伝統」だ。海苔佃煮に対する偏愛ぶりは私も森下さんも共通のもの。日本には同じような方が多いのではないか。「万城目学──モーニング」は京都の喫茶店について書いたもの。百万遍の「進々堂」、東大路通の「喫茶 六花」に心惹かれる。「吉村昭──朝のうどん」は宇和島で早朝だけ営業しているうどん屋の話。おそらく「やまこうどん」のことかと思われる。この店のことは以前から噂に聞いており、私は以前から行きたいと思っていた。どれを読んでも興味深い。ほんに私は朝ごはんが好きだ。
読了日:11月22日 著者:林 芙美子,色川 武大,久保田 万太郎,角田 光代,よしもと ばなな,石垣 綾子,堀井 和子,森下 典子,井上 荒野,佐藤 雅子,万城目 学,山崎 まどか,吉村 昭,小泉 武夫,山本 ふみこ,團 伊玖磨,椎名 誠,西川 治,東海林 さだお,池波 正太郎,小林 聡美,阿川 佐和子,蜂飼 耳,渡辺 淳一,向田 邦子,河野 裕子,筒井 ともみ,堀江 敏幸,窪島 誠一郎,増田 れい子,川本 三郎,久住 昌之,徳岡 孝夫,立原 正秋,佐野 洋子


最終退行 (小学館文庫)最終退行 (小学館文庫)感想
優しい心であったり、人として誠実であろうとする心は時に足かせになる。そんな心を持った行員が、それ故に出世に後れをとったとして、それは己の考えに従ったまでのことと我慢する。しかし、そうした人がさらに踏みつけにされ、真実が不当にゆがめられ責めを負わされるに至っては我慢も限界。「やられたらやり返す!」日本人はそうした勧善懲悪復讐劇が大好物なのだ。私も日本人のはしくれである。いやらしい悪人が小馬鹿にしていた人間からおもわぬ反撃をくらい、こてんぱんにやられた瞬間、やんややんやの拍手喝采をおくるものだ。
読了日:11月22日 著者:池井戸 潤


太陽といっしょ太陽といっしょ感想
子どもにとって毎日が新鮮であり、一日一日が冒険の連続であること。その冒険を終え帰る家、そこに待つ母親の存在が安らぎであること。おそらく新宮さんの子どもの頃の記憶をもとに書かれた物語だろうが、それを読む私の胸にも懐かしい感覚が蘇る。そうそう、子どもにとって自転車は魔法のような乗り物で、未だ見ぬ世界を冒険するための道具だった。自転車に乗ると風が、空が、雲が、新しい冒険へと私を誘ってくれた。  巻末に新宮さんの言葉があった。この言葉を読めただけで、この本を買った意味があったというものだ。
読了日:11月21日 著者:新宮 晋


こぽこぽ、珈琲 (おいしい文藝)こぽこぽ、珈琲 (おいしい文藝)感想
31人の達眼の士の目に映る珈琲のある日常。植草甚一、内田百閒、柏井壽、寺田寅彦常盤新平村上春樹吉田健一・・・。すごい顔ぶれです。珈琲にもエイジングがあるのだとか。やはり「おいしい」というのはこれと決まったものではなく複雑に積み重ねたものやちょっとしたゆらぎなのだな。家で飲む珈琲が一番おいしいと感じる幸せ、朝起き抜けのベッドで飲む珈琲の幸せ、寒い冬にラム入り珈琲を飲む幸せ、神田神保町でお気に入りの古本を読みながら飲む珈琲の幸せ。ほっこり温まった。1篇を除きすべてに満足。H.I氏だけはいただけない。
読了日:11月10日 著者:阿川佐和子,泉麻人,井上ひさし,植草甚一,内田百閒,柏井壽,片岡義男,草森紳一,黒井千次,小島政二郎,佐野洋子,清水幾太郎,滝沢敬一,種村季弘,團伊玖磨,塚本邦雄,寺田寅彦,常盤新平,外山滋比古,永江朗,野呂邦暢,畑正憲,星野博美,湊かなえ,向田邦子,村上春樹,村松友視,森本哲郎,山口瞳,吉田健一,よしもとばなな

読書メーター

『ぱっちり、朝ごはん』(林芙美子ほか・著/河出書房新社)

『ぱっちり、朝ごはん』林芙美子ほか・著/河出書房新社)を読みました。

 まずは出版社の紹介文を引きます。

その日の体調や気分を決定づける「朝ごはん」。
あのひとは、どんな朝ごはんを食べているの?
書き手の暮らしぶりが透けて見える「朝ごはんエッセイ」35篇を収録したおいしい文藝第5弾。

【収録作品】
林芙美子──朝御飯
色川武大──朝は朝食 夜も朝食
久保田万太郎──喰べもののはなし
角田光代──朝食バイキング
よしもとばなな──イタリアの朝ごはん
石垣綾子──朝食のたのしみ
堀井和子──1日3食、朝ごはんでもいい!
森下典子──漆黒の伝統
井上荒野──日曜日の気配
佐藤雅子──卵、たまご、玉子
万城目学──モーニング
山崎まどか──朝ごはん日和
吉村昭──朝のうどん
小泉武夫──秋田は納豆王国
山本ふみこ──朝餐
團伊玖磨──味噌汁
椎名誠──二日酔いの朝めしくらべ(国際篇)
西川治──大英帝国の輝かしい朝食—イギリス/田舎のホテル他
東海林さだお──オリエンタルホテルの朝食
池波正太郎──牛乳、卵、野菜、パンなど─フランスの田舎のホテル
小林聡美──ヒロの朝ごはん
阿川佐和子──豆乳の朝
蜂飼耳──ハノイの朝は
渡辺淳一──朝は湯気のご飯に納豆
向田邦子──海苔と卵と朝めし
河野裕子──卵かけごはん
筒井ともみ──早春の朝ごはん
堀江敏幸──白いお味噌汁
窪島誠一郎──卵かけご飯
増田れい子──さくらごはんを炊いた朝
川本三郎──「きよや」の納豆汁
久住昌之──朝のアジ
徳岡孝夫──霧の朝のハムエッグス
立原正秋──蝮と朝食
佐野洋子──二〇〇五年冬

 

 

 

 今日も元気だ朝ごはんがうまい!

 世の中には「朝は食欲がないから食べられない。珈琲だけ」とか「朝は野菜サラダとジュースだけ」とか「シリアルですませてる」などと私の理解の範疇を超えたことを宣う人がいる。それも意外に多い。しかし私は朝ごはんを大切にする男のひとりである。朝ごはんが健康に大切だとか、朝ごはんを食べないと脳が働きにくいとか、そういったたぐいの話ではない。むしろ最近では朝ごはんを食べると健康に悪いという説もあり、その説にはそれなりの説得力もある。では何故私は朝ごはんを大切にするのか。単純に朝ごはんが日々の楽しみだからだ。前日の夜7時頃に晩ごはんを食べ、朝5時に目覚めたとして、その間10時間。間食をしなければもうお腹はペコペコだ。ベッドから起きだし、トイレをすませるといそいそと朝ごはんの支度にかかる。炊飯器のスイッチを入れる。出汁をとり味噌汁を作り始める。ご飯が炊き上がるころ目玉焼き(サニーサイドアップ)を焼き始める。あとは納豆、味付け海苔、梅干しなどを用意する程度。日によっては卵をオムレツにしたり、アジの干物や鮭を焼いてみたり、湯豆腐を作ったりとアレンジはする。しかしさほど凝ったものを作ることはない。炊きたてつやつやのご飯があれば、おかずはシンプルなものほどうまい。私にとって朝ごはんは習慣であり、一日の始まりの儀式である。お日様が昇れば起き、しっかり朝ごはんを食べ仕事に出かける。そこにご大層な理屈はない。そうするのが当たり前なのであり、それこそが習慣なのだ。朝、起きたくない。仕事や学校に行きたくない。そんなことは考えない。日々の行動を習慣化する。しつけの問題だ。考える必要など無いではないか。理屈ではないといいながら結構理屈っぽくなってしまった。いかんいかん。

 さて本書『ぱっちり、朝ごはん』の中身である。さすが河出書房さんが選んだだけあっていずれも味のあるエッセイばかり。特に共感を呼ぶのは「森下典子──漆黒の伝統」だ。森下さんの朝ごはんのおともは桃屋の「江戸むらさき」だったらしいが、私にとってはブンセンの「アラ!」だ。桃屋は全国ブランドだが、ブンセンは関西それも兵庫県播州という地方ブランド。ブランドの違いこそあれ、海苔佃煮に対する偏愛ぶりは私も森下さんも共通のものだし、日本には同じような方が多いのではないか。いや、絶対に多い。間違いない。「万城目学──モーニング」は京都の喫茶店について書いたもの。百万遍の「進々堂」、東大路通の「喫茶 六花」に心惹かれる。確か柏井壽さんも京都を案内するエッセイに京都の喫茶店について書いていらっしゃったが、京都の喫茶店はなかなか奥深そうである。「吉村昭──朝のうどん」は宇和島で早朝だけ営業しているうどん屋の話。店名は書かれていない。おそらく「やまこうどん」のことかと思われる。この店のことは以前から噂に聞いており、私は以前から行きたいと思っていた。「椎名誠──二日酔いの朝めしくらべ(国際篇)」は世の酒飲みに共通する朝メシの問題だ。どれを読んでもそうだそうだ、なるほどなるほどと興味が尽きない。ほんに私は朝ごはんが好きだ。