佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『京都 大文字送り火 恩讐の殺意』(柏木圭一郎・著/小学館文庫)

『京都 大文字送り火 恩讐の殺意』(柏木圭一郎・著/小学館文庫)を読みました。

 まずは出版社の紹介文を引きます。

辰巳琢郎氏も推薦! 新・旅情ミステリー!

 京都のシンボル、東山如意ヶ岳。通称・大文字山の「大」の字を汚すように他殺死体が発見された。被害者は、京都有数の名店「料亭みなみ川」の主人・南川和雄。第一発見者であるカメラマン・星井裕は京都府警の刑事をしている元妻・安西美雪とともに事件の謎を追う。捜査が混迷を極めるなか、またも高名な料理人が死んだ……。千二百年の歴史を背負いながら生きる京都人が、命を賭してでも守り通したいものとは何なのか? 新世紀、新世代の旅情ミステリーは古都を舞台に歴史の幕をあける。京都を知りつくす超大型新人の、鮮烈なる書下ろしデビュー作。

 

京都大文字送り火 恩讐の殺意 (小学館文庫)

京都大文字送り火 恩讐の殺意 (小学館文庫)

 

 

 「名探偵・星井裕事件簿シリーズ」の第一弾。このシリーズは2008年8月に刊行された本書を皮切りに2012年6月までの4年間で全16作が刊行されたようです。これまで私は柏井壽名義で書かれた『鴨川食堂』シリーズや、京都の名所や全国名旅館を紹介するエッセイ・ガイド本をファンとして読んできた。当然のこととして柏木圭一郎名義で書かれたミステリーがどんなものか気になっていたのである。

 どうやら本書は出版社の「新・旅情ミステリー」シリーズとして出版されたようだ。本書のカバー裏に次のように記載されている。

「新・旅情ミステリー」は、新世紀、新世代の作家たちがおくる、書下ろし小説のシリーズです。今後、講談社文庫、光文社文庫双葉文庫小学館文庫より続々と新作が登場します。どうぞご期待下さい。 

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 柏木圭一郎氏の「名探偵・星井裕シリーズ」書下ろし第2作は、2008年秋、講談社文庫より刊行予定です。

 本書は小学館文庫から刊行されたが、なんと第2作は講談社文庫から刊行されるという。そのほか光文社文庫双葉文庫も相乗りなのか。珍しい。さらに複数の作家によって「新・旅情ミステリー」というジャンルを構成するという。調べてみると「みちのく麺食い記者 宮沢賢一郎」シリーズを相場英雄氏が、「警察庁広域特捜官 梶山俊介」シリーズを本城英明氏が、「駅弁味めぐり事件ファイル」シリーズを風見修三氏が書いていらっしゃるようだ。こうした文庫本を片手に、日本あちこちを巡る旅も楽しめそうだ。

 さて、私は本書をまさに京都を旅行しながら読んだのだ。洛北、妙満寺、実相院門跡などを紅葉を楽しみながら歩き、松乃鰻寮で昼食をとった。

 小説に登場する店、「清福菜館」「京楽スタンド」「市保堂」「菜心 しまだ」「割烹はらだ」などを「きっとあそこのことだな」とGoogleマップを参考に推理するのは楽しかった。新しい旅の楽しみ方であるな・・・ふむ。

 

2018年11月の読書メーター

11月の読書メーター
読んだ本の数:8
読んだページ数:2671
ナイス数:979

五条路地裏ジャスミン荘の伝言板 (幻冬舎文庫)五条路地裏ジャスミン荘の伝言板 (幻冬舎文庫)感想
ミステリーではあるが、柏井壽氏らしく京都の良さが伝わってくる小説。たとえばプロローグを読むだけでも京都のイイものはそこかしこにちりばめられている。『開化堂』の茶筒、『柳月堂』のパン、『柳桜園』のほうじ茶、『ミール・ミィ』のミルクジャムと京都の良いもの、おいしいものが出てきて嬉しくなる。新興の行列が出来るうどん屋と町中の食堂のこしぬけうどんをめぐる考察など、今年の春に上梓された『グルメぎらい』(光文社新書)に通じるところがあると感じた。 
読了日:11月03日 著者:柏井 壽


管見妄語 始末に困る人 (新潮文庫)管見妄語 始末に困る人 (新潮文庫)感想
藤原氏の歴史や国家を見る目は正鵠を射ている。本書を読みながら、我が意を得たりと膝を打つこと頻りであった。けだし慧眼というべきであろう。
読了日:11月04日 著者:藤原 正彦

 


王様の背中 (福武文庫)王様の背中 (福武文庫)感想
本書に収められたお伽噺の中で秀逸なのは、やはり表題作『王様の背中』であろう。それこそ何の教訓も、感動もなく、しかしそこはかとないおかしみを感ずるところなど、まことに味わい深い。  挿画としての谷中安規氏の版画がまた、この本にいっそうの味わいを持たせており、これがまた良い。大切に保管して、何度か読み返したい本の一つである。
読了日:11月07日 著者:内田百閒


消えた女―彫師伊之助捕物覚え (新潮文庫)消えた女―彫師伊之助捕物覚え (新潮文庫)感想
イイ! すごくイイ!! なにがイイかといえば、ハードボイルド臭プンプンしているところがイイのだ。主人公伊之助の(酒にも女にも)ストイックな態度、心に持つ哀しみの影、揺るぎない強さがイイ。この強さはけっして勇猛果敢の類いではない。危険に際して敏感でむしろ用心してかかる。しかし、ここ一番対決せねばならぬとあっては腹を据え、絶体絶命の局面では命をかけてみせる勇気を持つ、そうした強さである。幼なじみのおまさでなくても惚れようというもの。  第二作『漆黒の霧の中で』を読むのが楽しみである。
読了日:11月10日 著者:藤沢 周平


雪の断章 (創元推理文庫)雪の断章 (創元推理文庫)感想
本書は読者受けする黄金パターンを踏襲している。身寄りのない境遇→孤児院での苦労(憎らしいヒールの存在)→里親先での艱難辛苦(ヒールの存在)→白馬の王子の登場→恋心→恋愛成就。読者は主人公に感情移入し、憎らしいヒールに徹底的にいたぶられてもくじけず誠実に生きようとする主人公に拍手喝采し、白馬の王子の登場に歓喜し、紆余曲折を経ながらもハッピーエンドにおさまり胸をなで下ろし幸福に浸るのである。特に前半は続きが気になって読むのをやめられない。おもしろくないはずがないのだ。唯一の難点は主人公の心が頑なすぎるところ。
読了日:11月18日 著者:佐々木 丸美


ライトニング (文春文庫)ライトニング (文春文庫)感想
本書の魅力は端的に言って4点。天涯孤独の身になった美少女の行く末への興味。少女のピンチのたびに閃光と共に現れる騎士の正体。タイムパラドックスをかいくぐっての正義と悪の虚虚実実の戦い。ヒトラーチャーチルを物語に登場させるほどの壮大な意外性。  なにしろ孤児ものとタイムトラベルものという読者を惹きつけてやまない要素が合体しているのでエンタテインメントとして超一級の作品です。
読了日:11月22日 著者:ディーン・R・クーンツ


檀流クッキング (中公文庫BIBLIO)檀流クッキング (中公文庫BIBLIO)感想
自分で食材を市場へ買い出しに行く。東坡肉(トンポーロ)つくりで一日を棒に振る。文壇随一の名コック・檀一雄氏はそんな人だ。所謂食通やグルメというのとは少し違う。食べることが好きでうまいものを家庭で作る。もちろん料理店で食べることもあるだろうが、檀氏の姿勢は自分で食材を選び、手に入れて自分で調理するという家庭料理人だ。結局のところ、それが一番うまいのだ。私も下手ながら厨房男子のはしくれ。そのあたりの感覚は共通している。垂涎の料理が92種。これはまねてみるほかあるまい。
読了日:11月23日 著者:檀 一雄


花だより みをつくし料理帖 特別巻花だより みをつくし料理帖 特別巻感想
4編それぞれに味わい深いが、抜きん出ているのはやはり「涼風あり」であろう。小野寺数馬とその妻・乙緒の心象風景が描かれた良作。惚れて惚れて惚れ抜いて一緒になった妻ではないけれど、そして容易に夫に心を見せない妻ではあるけれど、数馬はそんな乙緒の心の内にある真心に気づいている。情熱で結ばれる夫婦もあるだろう。そうありたいとも思う。しかしほんとうに夫婦に必要なのは真心と思いやりなのだ。それが分かるこの短編は秀逸です。小野寺数馬、なかなかの男であります。
読了日:11月29日 著者:髙田郁

読書メーター

旅学人・「洛北 松乃鰻寮」のうなぎと岩倉・実相院門跡の床もみじ

2018/11/30

旅学人・「洛北 松乃鰻寮」のうなぎと岩倉・実相院門跡の床もみじツアーに参加。バスはYUI_PRIMAの3号車です。

 旅のお伴は名探偵・星井裕の事件簿シリーズ第一弾『京都大文字送り火 恩讐の殺意』(柏木圭一郎・著/小学館文庫)。事件の展開もさることながら、物語に登場するおそらく実在するであろう料理店がいったいどの店のことだろうと推理するのに忙しい。

 例によってシャンパン飲み放題。

 シャンパンに飲み飽きたらビールが。

 京都は岩倉に着き、まずは「雪の庭」「安珍清姫の鐘」で有名な妙満寺。この時期、紅葉の名所はどこも人、人、人で大変ですが、こちらは穴場ですね。本堂から見る紅葉のきれいな境内は比叡山を借景にする贅沢。名園「雪の庭」も見事。

 妙満寺のお坊さんにたっぷり30分案内いただいた後、本日のお目当て鰻をいただきに「松乃鰻寮」を訪れました。鰻は白焼きとお重をあわせてたっぷり二匹いただきました。味付けがあっさりしているのでペロリといただけると、同じツアーに参加した女性が口々に言っておられました。酒は黒松剣菱を冷やでいただきました。

 鰻で満腹になった後は実相院の床もみじ。文句なしに美しい。ただし、床もみじは写真NGなのでHPをリンクします。

www.jissoin.com

 

 紅葉と鰻を堪能し帰途につきましたが、途中、おいしい漬物を買いに立ち寄り。「加藤順商店」です。ちょうど千枚漬けがおいしい季節。お土産に買い求めました。

『花だより みをつくし料理帖 特別巻』(高田郁・著/ハルキ文庫)

『花だより みをつくし料理帖 特別巻』(高田郁・著/ハルキ文庫)を読みました。

 まずは出版社の紹介文を引きます。

澪が大坂に戻ったのち、文政五年(一八二二年)春から翌年初午にかけての物語。
店主・種市とつる家の面々を廻る、表題作「花だより」。
澪のかつての想いびと、御膳奉行の小野寺数馬と一風変わった妻・乙緒との暮らしを綴った「涼風あり」。
あさひ太夫の名を捨て、生家の再建を果たしてのちの野江を描いた「秋(しゅう)燕(えん)」。
澪と源斉夫婦が危機を乗り越えて絆を深めていく「月の船を漕ぐ」。
シリーズ完結から四年、登場人物たちのその後の奮闘と幸せとを料理がつなぐ特別巻、満を持して登場です!

花だより みをつくし料理帖 特別巻

花だより みをつくし料理帖 特別巻

 

 

 本書に収められたのは以下の4編。

  1. 花だより ~愛し浅利佃煮~
  2. 涼風あり ~その名は岡太夫
  3. 秋燕 ~明日の唐汁~
  4. 月の船を漕ぐ ~病知らず

 「みをつくし料理帖シリーズ」の最終刊完結編『天の梯』が発刊されて早4年。いつか続編が大坂を舞台に始まるのでは・・・と微かな望みを持っていた。今回特別編として「みをつくし料理帖シリーズ」の登場人物のその後が描かれた短編が4つ発表された。ファンとして僥倖に打ち震えながらむさぼり読んだ。

 4編それぞれに味わい深いが、抜きん出ているのはやはり「涼風あり」であろう。小野寺数馬とその妻・乙緒の心象風景が描かれた良作。かつて小野寺数馬は澪に惚れぬいていた。数馬が周りの心遣いと努力にもかかわらず澪を妻に迎え入れなかったのはけっして臆病であったからではない。心底、澪の幸せを考えてのことであったに違いないのだ。武家に嫁いだのでは澪の笑顔が損なわれると知っているからこそ別の道を行くことにしたのだ。澪と結ばれることなく数馬が結婚したのは能面のように感情を表に現さない乙緒。しかしそんな乙緒にも内に秘めた想いはある。惚れて惚れて惚れ抜いて一緒になった妻ではないけれど、そして容易に夫に心を見せない妻ではあるけれど、数馬はそんな乙緒の心の内にある真心に気づいている。そして姑の里津は数馬以上に乙緒のことを理解していた。情熱で結ばれる夫婦もあるだろう。そうありたいとも思う。しかしほんとうに夫婦に必要なのは真心と思いやりなのだ。それが分かるこの短編は秀逸です。小野寺数馬、なかなかの男であります。

 

 

 

 

YouTubeで落語 Vol.45『笠碁(かさご)』

『新版 落語手帖』(矢野誠一・著/講談社)に紹介された274席のうちの45席目は『笠碁』。十代目・金原亭馬生の名演で。

 碁敵同士が今日は待ったなしでやろうと打ち始めたが、しまったと思うとつい「ちょっとこの手、待ってくれないか」ということになる。待て、待たないからとうとうけんか別れしてしまう。数日経つとお互いに碁が打ちたくて仕方がないが、お互いに意地があって・・・という噺。

 たわいない噺だが、市井のお世辞にも人格者とは言えない狭量な二人の意地の張り合いがユーモラスに描かれるところがなんとも落語らしい。立川談志はかつて「落語は人間の業の肯定である」と言った。人間くさくできの悪い二人がそれだけにかわいいと思えるところが味わい。自分の中にも多かれ少なかれそういうところがあるから登場人物の心情が手に取るように判る。十代目・金原亭馬生の演技も見事。

 

www.youtube.com

 

 

 

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『檀流クッキング』(檀一雄・著/中公文庫)

『檀流クッキング』(檀一雄・著/中公文庫BIBLIO)を読みました。

 まずは出版社の紹介文を引きます。

「この地上で、私は買い出しほど、好きな仕事はない」という著者は、文壇随一の名コック。日本はおろか、世界中の市場を買いあさり、材料を生かした豪快な料理九十二種を紹介する“美味求真”の快著。

 

檀流クッキング (中公文庫BIBLIO)

檀流クッキング (中公文庫BIBLIO)

 

 

 自分で食材を市場へ買い出しに行く。東坡肉(トンポーロ)つくりで一日を棒に振る。文壇随一の名コック・檀一雄氏はそんな人だ。所謂食通やグルメというのとは少し違う。食べることが好きでうまいものを家庭で作る。もちろん料理店で食べることもあるだろうが、檀氏の姿勢は自分で食材を選び、手に入れて自分で調理するという家庭料理人だ。結局のところ、それが一番うまいのだ。私も下手ながら厨房男子のはしくれ。そのあたりの感覚は共通している。垂涎の料理が92種。これはまねてみるほかあるまい。

 

 

 

2018/11/23 新嘗祭 @姫路護国神社

 2018/11/23
 本日夕刻、天皇陛下は皇居・神嘉殿において在位中最後の新嘗祭に臨まれる由。それに先立つこと2時間前に私は「在来種保存会」の面々とともに姫路護国神社新嘗祭に臨み五穀豊穣に感謝した。

 新嘗祭を終えた我々は「大黒や」に向かい直会と称して飲み会に突入した。私は自転車で来ていたので、酒はちょっと口を付けただけで、あとはウーロン茶で過ごした。

 お城周辺も木々が色づき美しい。おりしも月はまん丸、気温が低いこともあって月も星も鮮やかに見える。往復40kmたらずのサイクリングが心地よかった。

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