ウェルズの日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

「天国への階段」(幻冬舎文庫/白川道 著)を読了

Led Zeppelin 「Stairway to Heaven」が頭の中で流れ続けている。
白川道氏の手になる小説「天国への階段」を読み終えてからずっと・・・・

There's a lady who's sure
All that glitters is gold
And she's buying a stairway to heaven.

切ない物語だ。主人公は45歳の実業家・柏木圭一。東京で貸しビル、人材派遣、ゲームソフトの会社を経営する新進気鋭の人物だ。彼の故郷は北海道浦河町絵笛。美しい町だ。しかし、彼は故郷を捨てた。彼に帰る故郷は無い。圭一の父は絵笛で小さな牧場を営んでいたが、その牧場を騙し取られ非業の死を遂げた。騙したのは隣の牧場主・寺島浩一郎。圭一は浩一郎の娘・亜希子と将来を誓い合った仲であった。しかし、その亜希子は圭一に一通の手紙を残し、東京の資産家の息子と結婚してしまう。圭一はその手紙を読まず、高校3年の夏に亜希子からプレゼントされたLed ZeppelinのLPと共に絵笛駅のそばに埋め、絶望だけを胸に東京に向かう。19歳の夏であった。上京した圭一はただ成功することだけを夢見て働いた。お金では買えやしないとわかっていながら「天国への階段」を買えるだけのお金を得るために。26年の歳月を経て、圭一は政財界の注目を集める実業家になる。圭一の胸にはある復讐のシナリオがあった。

 紹介文を引用する

復讐のため全てを耐えた男。ただ一度の選択を生涯悔いた女。二人の人生が26年ぶりに交差し運命の歯車が廻り始める。次々起こる殺人事件。音もなく忍び寄る不気味な影。老刑事の執念の捜査。生者と死者。親と子。追う者と追われる者。孤独と絶望を生きればこそ愛を信じた者たちの奇蹟を紡ぐ慟哭のミステリー!

読み応えがある小説だ。上巻474ページ、中巻470ページ、下巻488ページ。少しも退屈させない。物語の展開が気になりページを捲る手が止まらない。読んでいて悲しい結末を予感する。どう考えても救いが無い結末が必然と思われる。しかし、何とか圭一が救われる道がないものかと身悶えしながらページを捲る。結末には涙してしまった。放心した頭の中に「Stairway to Heaven」のメロディが流れる。高校3年の夏、圭一と亜希子が絵笛の星を眺めながらこの曲の歌詞の意味を語り合っている姿が思い浮かぶ。そして、一年後、19歳の夏、全てに裏切られた絶望を胸に、思い出のツェッペリンのLPを割り、駅のそばに埋める圭一の姿を想い、胸が締めつけられる。
おそらくこの小説をミステリーの出来損ないだとか、安っぽいセンチメンタリズムとこき下ろす向きもあるだろう。しかし、そんな批判は小賢しい中傷でしかない。唯一人の女を終生愛し続ける男がいる。唯一人の男を終生愛し続ける女がいる。変わらぬ愛というものがある。命に代えても守りたいものがある。人はそんなものは小説の中だけだよと云うかもしれない。しかしフィクションの中にこそ、真実があるのではないか。小説だからこそ真実が描ける、そのすばらしさが際だつ。私にはそう思える。