佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

「真相」(ハヤカワ・ミステリ文庫/ ロバート B.パーカー著/ 菊池光 訳)を読了

 スペンサー・シリーズ第30弾だ。いつもながら菊池光氏の翻訳が冴えている。

紹介文を引用する

母を殺した犯人たちを見つけてもらいたいの―迷宮入りになった28年前の銀行強盗事件で犯行グループに射殺された被害者の娘が、真剣な面持ちでスペンサーに訴えかけた。警察の捜査報告書によれば反体制の革命グループが犯行声明を出していたが、その正体は不明のままだった。やがて政府の秘密機関員だと名乗る男が、スペンサーのもとに忠告に現われた。事件の調査から手を退いたほうが身のためだというのだ。それは、彼がさらなる情報を求めてFBIの支局を訪れた直後のことだった。その後、ガンマンが銃をちらつかせながら、事件に関わらないようにとスペンサーに脅しをかけてくる。28年前の強盗事件の裏に、どんな秘密が隠されているというのか?関係者の多くが口を閉ざすなか、スペンサーが突き止めた苦い真相とは…。パラダイスの警察署長ジェッシイ・ストーンの協力を得たスペンサーが、28年の時を越えて事件の真相に迫る。シリーズ第30作と、パーカーの作家デビュー30周年を記念して、巻末に作家、評論家など著名人による特別アンケートを収録。

 今回もスペンサー・シリーズ・ファンの期待を裏切らない良い出来だ。ホークとの名コンビ、言葉のやりとりにファンはニヤリとするだろう。
 巻末の「スペンサー・シリーズ私のベスト・ワン」も興味深い。私的には関口苑生氏(文藝評論家)の推す「ゴッドウルフの行方」に一票。氏曰く「やっぱ、これでしょう。何つってもスーザンが出てこないのが最高。・・・・・スーザン登場前のスペンサーは本当に良かった。」 激しく同意する。スーザン・シルヴァマン博士ははっきり言って私の好みの女性ではない。
 カッコイイところを抜き書きしてみよう。状況はこうだ。スペンサー(主人公・探偵・白人)とホーク(スペンサーの相棒・黒人)はコッドマン広場にあるコーヒー・ショップにいる。ホークの知人ソーヤー・マッキャン(黒人で白人に敵意を抱いている)から事件に関係した情報を聞き出すためだ。コーヒー・ショップの客はスペンサーを除いて全員が黒人だ。

「ちょっと訊きたい」マッキャンが私に言った。「おれがお前の頭を殴ることにしたら、ここにいる誰かがお前を助けてくれる、と思うか?」

「答えは二つ」私がマッキャンに言った。「一つ、おれは手助けを必要としない。そして、二つ、彼が助ける」
私はホークのほうへ首を倒した。マッキャンが目をホークに向けた。
「そうするのか?」
「答えは二つ」ホークが言った。「一つ、おれは助ける。そして、二つ、おれが助ける必要はない」

カッコイイ、しびれる。こうしたやりとりがハードボイルドの魅力だ。