ウェルズの日記

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「悪人海岸探偵局」(双葉文庫 / 大沢 在昌 著)を読了

イイ! かなりイイ! ジャケットが・・・・

悪人海岸探偵局 (双葉文庫)

悪人海岸探偵局 (双葉文庫)

いやいや、物語もなかなかのものだ。
BAD GUY BEACH DETECTIVE
かっこいいゼ!

紹介文を引用する

ギャルとギャングが溢れかえる悪人海岸で、腕っ節と度胸を武器に、私立探偵・木須志郎が大暴れ!「気に入った女の子には熱いオンリップのキッスを、気にいらねえやろうには固いオングラウンドのキッスを」がモットーで、悪いヤツには滅法強いが、お色気と情にはとことんもろいナイスガイ。はてさて事件は解決するのか・・・・・・・・。
痛快ハードボイルド連作。

 
小説自体はライト感覚だ。読み始めの印象は「軽い」であった。「軽薄」と行っても良いぐらいの感覚だ。「シティーハンター」というアニメがあったが、ちょっとそれに似た感覚といえばわかるだろうか。
しかし読み進めるうち決して「軽薄」なのではなく、日本の小説にありがちな「湿っぽさ」が無いのだと気づく。主人公・木須志郎(キッスのシロー)は決して深刻ぶらない。悩むそぶりや傷つくそぶりなど微塵も見せない。しかし、それが大沢氏が描きたかった主人公の生き様なのだろう。主人公は決して恐れない。自分が傷つくことも、死ぬことをも恐れてはいない。死の危機に瀕してさえ、シローは軽口をたたいている。しかし、そんなシローも自分が大切に思っている人が傷ついたときは態度が一変する。軽口をたたく余裕など無い。というより、真剣モードに入る。そう、そんなとき読者は「キッスのシロー」が決しておちゃらけていい加減に生きているのではなく、自分の規範を守り真剣に生きているのだと知る。まさにハードボイルドな生き方なのである。

作中、シローが、昔、お袋さんからいわれたことを書いているところがある。なかなか気が利いているので、いくつか抜き書きしてみよう。

初めて女に惚れて、ふられたとき、お袋がいったもんだ。
「泣いた分だけ、男は仕事に強くなる、女は男に強くなる」

昔、お袋がいったもんだ。
女の顔が美人に見えるときが二度ある。出会いの顔と別れの顔だ。美しさの意味は、それぞれちがう。
出会いの顔には、これから夢を見ようって希望がある。この夢にはだまされてもいい。
だが、別れの顔の美しさには、去っていくときの未練と打算がある。こいつにほだされると、男は地獄を見ることになる。

「自分より強い相手に我慢したらそれは卑怯、弱い相手に我慢してこそ男」
小さい頃、俺は一度だけ女の子を泣かしちまったことがある。それは女の子があまりにひどいわがままをしたからなんだが、そのとき俺に大目玉を落としたお袋がいったもんだ。

この作品は1990年に集英社から刊行されたらしい。もう18年前にもなるのか。その後、続編が書かれたという話を聞かない。シリーズ化しても良いキャラクターだと思うのだが。
大沢さん、続編書いていただけませんか。

♪本日の一曲♪ TM NETWORK - STILL LOVE HER

City Hunter 2 のエンディングだ。

♪本日のもう一曲♪  Moonlight in Vermont

第一話に登場する曲。主人公・木須志郎がバーでジントニックを飲みながら聴く曲だ。
私も一杯やろう。