ウェルズの日記

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「花芯」(瀬戸内寂聴:著/講談社文庫)を読み「定低温熟成酒・ひこ孫・1996瓶詰め」を飲む

「花芯」(瀬戸内寂聴:著/講談社文庫)を読んだ。

花芯 (講談社文庫)

花芯 (講談社文庫)

瀬戸内女史の作品を読むのは初めてだ。過去に読んだ小説は1000冊を超えているのに、ビッグネームである彼女の本を読んだことが無いのは不思議である。思い当たる理由は無いが、彼女が天台宗の尼僧であることが影響しているのかもしれない。(私は出来るだけ宗教に近づかないように生きてきました。たいそうな理由があるわけではありませんが・・・) あるいは、夫と子供を捨てて走った夫の教え子との恋、妻子ある作家との不倫、奇妙な三角関係といった彼女にまつわるエピソードから、彼女を毛嫌いしていたのかもしれない。


「花芯」は発表当時ポルノ小説であるとの批判にさらされ、「子宮作家」とまで呼ばれ、一時、文壇から干されたと聞く。この小説が発表されたのが1957年であったことを思えば、いかにもそのような反応が起こりそうな時代ではある。なにせ私などまだ母親の子宮にも居なかったのだから。当時のことだ、谷崎潤一郎は許せても瀬戸内晴美は許せなかったのかもしれない。

小説として文学史に残る素晴らしい作品であると思う。しかし、読んでいて、背筋が寒くなるほど怖いのである。女という生き物が怖くなる。主人公の園子は「完璧な娼婦」として描かれている。それは男にすれば夢(最高の女性)である。しかし、男が夢見る女性の内面を、心情をこれほど的確に表現されると怖いのである。男はそれを直視したくないのだ。女の中に男を怖れさせる暗いものがあることを薄々はわかっていても、それを知りたくない、視たくないというのが男の心情である。それを、直視し受け入れられるほど男は強くない。
正直なところ、「花芯」は私の心にズシンと重いものを残しており、読み終えてしばらくした今なおその感覚を私はもてあましている。

本書には「花芯」の他、「いろ」「ざくろ」「女子大生・曲愛玲」「聖衣」四編の短編を収めている。中でも、特に良かったのが「いろ」だ。顔の左半面に火傷の痕がある美しい三味線の女師匠「るい」と、31歳年下の男「銀二郎」との恋物語である。「銀二郎」が29歳のとき、60歳になる「るい」の世話をしようとしたとき、「いろに養ってもらうほど、あたしゃ女をすたらせたくないのさ」とさらりと言ってしまう「るい」の想いの深さに感動。




∀本日の酒∀

「ひこ孫 純米吟醸 定低温熟成酒 1996瓶詰め」
お気に入りの短編「いろ」から連想して「るい」のように素敵な熟成酒が飲みたくなり、神亀酒造の酒を選びました。
これは、熟成も熟成、1996年ものです。
ここまでくると、もう酸いも甘いも噛み分けた域です。爽やかな吟醸香など望むべくもありませんが、代わりに何とも不思議な味わい深さがあります。いつも飲みたいとは思いませんが、たまには良いものです。



♪本日の一曲♪

60歳を超えてなお色気を失わない The Rolling Stones をどうぞ。
中学校の頃、何度も何度も聴いた曲です。

ANGIE - THE ROLLING STONES