『二百年の子供』(大江健三郎:著/中公文庫)を読みおえました。
- 作者: 大江健三郎
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2006/11
- メディア: 文庫
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「私は大江健三郎氏の小説が好きではない」
と言うわけで、今は読んでいない大江氏ですが、このたびある読書の会の今月のテーマ図書になったので読むことにしました。今月はパスしようかとも思ったのですが、この小説は他の作品に比べて平易に書かれていること、大江氏はこの小説をファンタジーと言っているらしいこと、さらに「自身が子供向けに書いた唯一の作品」と述べているらしいことを聞き、そういうことならと読んでみることに・・・・
《出版社/著者からの内容紹介》
タイムマシンにのりこんだ三人の子供たちが出会う、悲しみと勇気、そして友情。ノーベル賞作家の、唯一のファンタジー・ノベル。舟越桂による挿画完全収載。
読んでみてどうだったか?
はっきり言ってこの小説のどこが良いのか私にはわかりません。さらに、大江氏が「子供向けに書いた」とおっしゃったことが信じられません。確かに他の作品に比べれば、文章が平易になっています。しかし、わかりにくいのは相変わらずです。だいいちストーリーがつまらない。もっと、読者を楽しませる書き方があるだろうに。
読んでみて、何となく解るのは、この本も大江氏が発表したさまざまな作品を通して一貫して読者に伝えようとしている「反戦」「反管理社会」「人間の再生」「弱者との共生」などをテーマとしているのだろうということ。
この本の良いところは、力のある言葉がでてくるところ。例えば
■元気をだして死んでください!
■大丈夫、わたしがまた生んであげる
■どうして人間はいやな言葉も作ったのかなあ・・・・
この本を読んでもう一つ思ったことは、どうして大江氏はノーベル文学賞を受賞したのだろうということ。私のように大江氏の小説が理解できないものにも、氏が作家として抜きん出ているのであろうことは何となくわかります。好きか嫌いかは別にして、氏の文体が独特であることもわかる。そして、小説世界が示唆に富んでいることも。しかし、原語で読める日本人にすら難解な氏の小説が、翻訳で読む外国人に伝わるとは思えないのだが・・・不思議だ。