- 作者: 三崎亜記
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2008/11
- メディア: 文庫
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さて、本作『バスジャック』ですが、多彩な技をみせてくれる全7編の短編集。全て「小説すばる」の2005年2月号から9月号の間に掲載された短・中編です。とにかく発想がユニークです。作品のユニークさのせいかどうかわかりませんが、私が読んだ感想は「なんとなく落ち着かない。」でした。特に最初の一編「二階扉をつけてください」は、物語全体を通じてなんともいえない居心地の悪さのようなものが全体をつつんでいます。結末でその居心地の悪さの正体がわかる仕組みになっているのですが、はっきり言ってこの結末はいただけません。私はこの最初の短編で三崎氏を好きになれないなと断定したものの、そこで読むのを止めたかというと、続く作品も読んでしまいました。好きになれないと解っていても、次を読ませるだけの不思議な力が三崎氏にはあるようです。
表題になった『バスジャック』は独特のユーモアがある作品。この短編で三崎氏が描く世界は「なさそうでありそうな不思議な世界」である。あり得ないことなのだが、あるかもしれないと思わせるところが作者の力なのだろう。
7編の中で秀逸なのは『送りの夏』です。この作品には正直、引き込まれました。これを読んで三崎氏の他の作品も読んでみようかと思いました。しかし、別の作品を読むかどうかは解りません。何故か私は三崎ワールドにある種の不気味さを感じてしまうのです。なんというのか、スゴイとは思うのですが、心が妙に冷えている、そんな感じです。