佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『わしらは怪しい雑魚釣り隊 / 椎名誠(著)』(新潮文庫)を読む


 ぼくのまわりには常に怪しい男たちがいる。時代を通してそういうのがいて、かならずいつの間にかそういうのがぼくのまわりに大勢集まってくる。どうもそういう運命というか人生みたいだ。
 お前がいちばん怪しいからだろうという意見は正しいが、「怪しい」と「正しい」を比べたら絶対「怪しい」ほうが楽しいし面白いのである。考えてもみなさい。「正しいおじさん」より「怪しいおじさん」のほうが面白そうだし、「正しい人妻」よりは「怪しい人妻」のほうがなんぼか魅力的だ。「わたしは正しい政治家である。嘘だと思うならわたしの目を見なさい」などという政治家の目はたいてい血走って暗く濁っているものである。
                                        (作者まえがきより)

わしらは怪しい雑魚釣り隊 (新潮文庫)

わしらは怪しい雑魚釣り隊 (新潮文庫)


『わしらは怪しい雑魚釣り隊 / 椎名誠(著)』(新潮文庫)を読みました。

裏表紙の紹介文(あらすじ)を引きます。

タイだのヒラメだの偉い魚の陰で、ヒイラギだのネンブツダイだのの“雑魚”たちはいつも軽んぜられ、悲しい運命を背負っている。勇んで釣りに出かけた仲間たちの本命は、実はこの雑魚。ダシにして雑魚鍋を作り、酒を飲もう!あの〈怪しい探検隊〉の伝説のおバカたちが、焚き火だ、キャンプだ、メシだ、宴会だと再集結。シーナ隊長もドレイもノリにノッての大騒ぎ。シリーズ最新版。


 椎名誠が好きだ。思い起こせば1981年の未だ寒さの残る早春、私は大学4回生になろうとしていた。もう卒業に必要な単位はほぼ取りきって(といっても可ばかりだったが・・・)毎日、神戸ポートピア博覧会のアルバイトに出かけていた。アルバイト前にふと立ち寄った三宮の書店でなんとなく手に取った一冊が「かつをぶしの時代なのだ」。椎名誠氏のスーパーエッセイとしては初期の作品だった。この本に腹がよじれるほど笑い、氏の日常を観察する目に心酔し、氏の生き方に強烈に憧れた。すぐにデビュー作「さらば国分寺書店のオババ」を読み、続いて「気分はだぼだぼソース」「哀愁の町に霧が降るのだ 」とエッセイを読み込み、氏の独特の文体、いわゆる「昭和軽薄体」に毒されひたすらおバカになっていったのであった。しかし、おバカになったからといって不幸になったかと言えばさにあらず。どちらかといえば幸せに暮らしてきたといえる。そう、氏の『「正しい」より「怪しい」のほうが面白いのだ!文句あっか!!』といった価値観に少なからず影響されたおかげで、正しく清らかな紅顔の美少年であったウェルズは、おバカで怪しく厚顔無恥な中年へと徐々に変貌していったのであった。しかしある意味それは人間らしくなったとも言える。人からはどのように見えるか知らないが、私はシーナさんのおかげで少しずつ私らしくなっている。人生の楽しみ方を分かってきている・・・と思う。

 作者あとがきによると「怪しい探検隊」シリーズは本書を含め8冊が出版されているらしい。(カッコ内は角川文庫出版年)
1.「わしらは怪しい探検隊」(1982年)
   確かに読んだが本が書棚に残っていない。買って読み直す必要有り。
2.「あやしい探検隊北へ」(1992年)
   これもたぶん読んだ。しかし書棚に残っていないので記憶違いかも。
3.「あやしい探検隊 不思議島へ行く」(1993年)
   読んでいないと思う。
4.「あやしい探検隊 海で笑う」(1994年)
   既読。書棚で確認。
5.「あやしい探検隊 アフリカ乱入」(1995年)
   既読。書棚で確認。
6.「あやしい探検隊 焚火酔虎伝」(1998年)
   既読。書棚で確認。
7.「あやしい探検隊 バリ島横恋慕」(2002年)
   未読。
そして本書である。その他に「あやしい探検隊 焚火発見伝」という本が小学館から発売されており、これは読んでいる。こうしてみると椎名氏の本はほとんど読んでいるつもりだったが読んでいないものが多いことに気付く。amazonで「椎名誠」で検索してみたら428件もヒットした。紀伊国屋書店BookWebでは412件ある。書棚にある椎名氏の本は86冊。Web書店には単行本と文庫本が二重にあることを考慮しても未だ半分も読んでいない。「スマヌ、スマヌ、シーナさん」などと偉そうに謝りながら読み洩れている本をそのうち読むぞと決意する今日この頃なのであった。それにしても椎名氏は「もだえ苦しむ活字中毒者地獄の味噌蔵」という小説の中で、活字中毒の恐ろしさを教えてくれているが、どんどん活字中毒になっていくのが怖い。おまけにアル中ぎみやしなぁ・・・