つらいときは、すきなだけ泣きなはれ。足(た)るだけ泣いてもよろし。そやけど、自分が可哀想やいうて、あわれむことだけはあきまへんえ。それは毒や。つろうて泣くのと、あわれむのとは違いますよってな。
(本書P36より)
山本一力氏の小説『梅咲きぬ』を読みました。
- 作者: 山本一力
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2007/09/04
- メディア: 文庫
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深川の老舗料亭「江戸屋」の女将、秀弥(ひでや)とその娘、玉枝(たまえ)の物語だ。
裏表紙の紹介文を引きます。
玉枝は、深川の料亭「江戸屋」の女将である三代目秀弥の一人娘。周囲の人々の温かく、時に厳しい目に見守られながら、老舗の女将としての器量を学びつつ一人前に成長していく。山本作品にたびたび登場する四代目秀弥の少女時代にさかのぼり、母から娘へと受け継がれる江戸の女の心意気を描く、波乱万丈の物語。
主人公の娘・玉枝は利発な子だ。その玉枝が尊敬しあこがれる母・秀弥の言葉や振るまいを一生懸命理解しようとする。いくら利発な子とはいえ子どもは子ども、理解できないこともあるがそれでも母を女将と敬い従う。女将の言動の意味を理解しようとする。母・秀弥は娘・玉枝をいずれは四代目女将となれるよう厳しく躾ける。全て娘の将来を思ってのことだ。作者は親の愛とは、子どものしつけとはどうあるべきか、人としての生き方は如何にあるべきかを物語を通じて読者に問いかける。老舗女将として矜持を持って凛として生きる母娘の姿に清々しい感動を覚えた。道理をわきまえた人を見るのは気持ちが良い。ましてその相手が子供であれば尚更のことである。