佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

風が強く吹いている

「長距離選手に対する、一番の褒め言葉がなにかわかるか」
「速い、ですか?」
「いいや。『強い』だよ」

風が強く吹いている (三浦しをん:著/新潮文庫)を読み終えました。三浦しをんさんの本は3月に『まほろ駅前多田便利軒』を読んで以来、2冊目です。

http://hyocom.jp/blog/blog.php?key=82246

まほろ駅前多田便利軒』がたいへん良い小説だったので、この小説も是非世みたいと思って買っていたのですが、他の本を読んでいて映画の封切り(10月31日)に間に合いませんでした。別に映画が封切られる前に読み終える必要もないのですが、テレビで映画の話題がでたりすると世間に乗り遅れるというあせりがありました。ちょっと遅れはしましたが、これで明日から映画の話題が出ても「僕は映画は見てないんだけど、原作は読んだよ」などとちょっと偉そうに言えるのだ。それでイイのだ。

風が強く吹いている (新潮文庫)

風が強く吹いている (新潮文庫)

裏表紙の紹介文を引きます。

箱根駅伝を走りたい――そんな灰二の想いが、天才ランナー走と出会って動き出す。「駅伝」って何? 走るってどういうことなんだ? 十人の個性あふれるメンバーが、長距離を走ること(=生きること)に夢中で突き進む。自分の限界に挑戦し、ゴールを目指して襷を繋ぐことで、仲間と繋がっていく……風を感じて、走れ! 「速く」ではなく「強く」――純度100パーセントの疾走青春小説。

「速い」に価値を見いだすとすれば、頂点に立つのはだだ一人。その距離を一番短い時間で走りきった者だけが勝者。極めて明快である。しかし、箱根においては『強さ』こそが価値を持つ。「速い」に価値がないわけではない。「速さ」は勝つために必要だ。しかし、箱根においては10人全員が走りきらねばならない。襷を次の走者に繋がなければその時点でレースは終わってしまう。たとえ10人のうち9人が区間賞を取ろうとも、最後の一人が完走できなければ意味が無くなってしまう。どんなに練習を重ね、速く走れる力をつけていても、体調、精神状態、コース、レース展開、天候などランナーを取り巻く状況はその都度違う。速さだけではロング・ディスタンスを戦い抜くことはできない。駅伝選手に求められるのは本当の意味の強さである。いつも自己ベストのタイムで走れるわけではない。どんなに己の状態が悪くとも、その状態の中で可能なベストタイムをたたき出す。しかもけっして途中で投げ出すことなく責任を果たす。たとえ己のタイムが区間最下位のタイムであっても、己がその時の状況の中で出せる最高のタイムで走りきること、それこそが駅伝選手の矜持だ。選手は『強い』と称されるこを誉れにして「天下の険」を走る。

何度も泣きました。