- 作者: 松本清張
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1965/06/30
- メディア: 文庫
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『或る「小倉日記」伝』(松本清張/著・新潮文庫)を読みました。
松本清張の傑作短編集の第1集である。
この短編集の表題となっている『或る「小倉日記」伝』は第28回芥川賞受賞作品です。
松本清張といえば、私は高校時代に何編か推理小説を読んでいる。「点と線」「ゼロの焦点」「砂の器」などである。
従って、私の中で松本氏は推理小説作家と認識されていたのだが、この短編集を読んで実はそうではなかった。
むしろこうした社会小説が氏の原点であり、氏の内面が現れるものだとわかった。不明を恥じております。
収められているのは12編。
その多くの作品に共通するのは、非凡な才能を持ちながら世間から正統な評価を受けられない人を描いている点である。
評価されないのは生まれ、貧乏、学歴、身障の故である。
貧乏な家に生まれて、高等小学校卒業後すぐ働きに出て、苦労しながら小説を書いた氏の境遇が色濃く反映されていると思える。
その思いは相当深く鬱積しており、屈折しているようにも見える。
怨念といってもよいだろう。この劣等感にも似た想いの深さが氏をして原稿用紙に向かわしめたのか。