佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

サクリファイス SACRIFICE

この世でもっとも美しく、効率的な乗り物。

最低限の動力で、できるだけ長い距離を走るために、恐ろしく計算され尽くした完璧なマシン。

これ以上、足すものもなく、引くものもない。空気を汚すことすらないのだ。

サクリファイス』(近藤史恵/著・新潮文庫)を読みました。

サクリファイス (新潮文庫)

サクリファイス (新潮文庫)

裏表紙の紹介文を引きます。

ぼくに与えられた使命、それは勝利のためにエースに尽くすこと―。陸上選手から自転車競技に転じた白石誓は、プロのロードレースチームに所属し、各地を転戦していた。そしてヨーロッパ遠征中、悲劇に遭遇する。アシストとしてのプライド、ライバルたちとの駆け引き。かつての恋人との再会、胸に刻印された死。青春小説とサスペンスが奇跡的な融合を遂げた!大藪春彦賞受賞作。

紹介文にあるとおり大藪春彦賞受賞作です。しかも第5回本屋大賞の第2位受賞作でもあります。

ちなみに大賞は伊坂幸太郎氏の『ゴールデンスランバー』。これも読みたくて買ってはいますが積読本になっています。早く読まなくてはと焦ります。

2008年第5回本屋大賞の受賞作

大賞『ゴールデンスランバー』著/伊坂幸太郎(新潮社)509.5点

2位『サクリファイス』 著/近藤史恵(新潮社)312点

3位『有頂天家族』 著/森見登美彦幻冬舎)280.5点

4位『悪人』 著/吉田修一朝日新聞社)233.5点

5位『映画篇』 著/金城一紀集英社)227.5点

6位『八日目の蝉』 著/角田光代中央公論新社)225点

7位『赤朽葉家の伝説』 著/桜庭一樹東京創元社)213.5点

8位『鹿男あをによし』 著/万城目学幻冬舎)196.5点

9位『私の男』 著/桜庭一樹文藝春秋)129.5点

10位『カシオペアの丘で』 著/重松清講談社)126点

話が横道にそれました。この『サクリファイス』という小説ですが、すばらしいです。

本書は読者の想像を超える意外な結末を用意した優れたミステリであり、読み進むとともに緊迫感が深まる極上サスペンスであり、若者の微妙な心の揺れを描いた青春小説であり、気高き男を描いたハードボイルド小説である。

「アシストを徹底的に働かせること。それが勝つためには必要だ。自分のために働かせて、苦しめるからこそ、勝つことに責任が生まれるんだ。奴らの分の勝利も、背負って走るんだ。わかるか」

この言葉に、この覚悟にこの小説の精粋がある。