ウェルズの日記

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『その白さえ嘘だとしても』(河野裕:著/新潮文庫nex)

『その白さえ嘘だとしても』(河野裕:著/新潮文庫nex)を読みました。

 

その白さえ嘘だとしても (新潮文庫nex)

その白さえ嘘だとしても (新潮文庫nex)

 

 

 

 100人いれば100とおりの「正義」があるように、100人にはおそらく100とおりの「色」がある。しかし、その中に一人として「純白」はない。

 「純白」について考えてみよう。物体がすべての波長の可視光線を100%乱反射するとき、その物体は白いという。しかしながら100%の反射率を持った物体は実在しないらしい。つまり我々が「白」と認識している色は白く見えているのであって、決して白ではない。白く見えるものをいくら塗り重ねても、決して「純白」には到達し得ない。切ない話である。

 人は若いころ「そうありたい自分(あるいはあるべき自分)」を想う。純粋にそれを想えば想うほど、突き詰めるほど決してそこに到達し得ないことを知る。いい加減にあきらめないからこそ、それが不可能だと知るのだ。この物語は「そうありたい自分」をあきらめることができないからこそ自分を棄てざるを得なかった人たちの物語だ。若かったころ自分を包んでいたある種の気分のようなものが少し呼び覚まされた気がした。その気分を一言でいうと「切なさ」だ。

 

最後に出版社の紹介文を引いておきます。

あの頃の僕らは、誰かのヒーローになりたかった。

クリスマスを目前に控えた階段島を事件が襲う。インターネット通販が使えない――。物資を外部に依存する島のライフラインは、ある日突然、遮断された。犯人とされるハッカーを追う真辺由宇。後輩女子のためにヴァイオリンの弦を探す佐々岡。島の七不思議に巻き込まれる水谷。そしてイヴ、各々の物語が交差するとき、七草は階段島最大の謎と対峙する。心を穿つ青春ミステリ、第2弾。