ウェルズの日記

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『錦繍』(宮本輝・著/新潮文庫)

錦繍』(宮本輝・著/新潮文庫)を読みました。

まずは出版社の紹介文を引きます。

 

会って話したのでは伝えようもない心の傷。14通の手紙が、それを書き尽くした。

「前略 蔵王のダリア園から、ドッコ沼へ登るゴンドラ・リフトの中で、まさかあなたと再会するなんて、本当に想像すら出来ないことでした」運命的な事件ゆえ愛しながらも離婚した二人が、紅葉に染まる蔵王で十年の歳月を隔て再会した。そして、女は男に宛てて一通の手紙を書き綴る――。往復書簡が、それぞれの孤独を生きてきた男女の過去を埋め織りなす、愛と再生のロマン。

 

錦繍 (新潮文庫)

錦繍 (新潮文庫)

 

 

 美しい往復書簡です。相手を思いやり、あふれ出ようとする自分の感情を節度を持って表現する。会話ではなく、手紙であるからこそ出来ることです。

 この小説を読むことで私は「恕」の心の崇高さを知った気がします。けっして平坦ではない人生を歩み、本当の苦しみも哀しみも味わった末に人を恕すことが出来るかどうか。不幸を他の何者かのせいにするのではなく、ただ受け入れることが出来るかどうか。そこに人としての品格が表れるのだろう。

 美しく気高い心と心が織りなした14通の書簡はやはり哀しい。哀しいが、そこには「未来」と「希望」がある。私にとって忘れられない一作になりそうです。