まずは出版社の紹介文を引きます。
信長亡きあと、清須城を舞台に、歴史を動かす心理戦が始まった。猪突猛進な柴田勝家、用意周到な羽柴秀吉。情と利の間で揺れる、丹羽長秀、池田恒興ら武将たち。愛憎を抱え、陰でじっと見守る、お市、寧、松姫ら女たち。キャスティング・ボートを握るのは誰なのか?五日間の攻防を「現代語訳」で綴る、笑いとドラマに満ちた傑作時代小説。
いやぁ、おもしろい。つまらないページが1ページもないのだ。これはすごいことです。三谷氏の発想は常人のそれを超越している。常人には見えないモノが三谷氏には見えているに違いない。かといって、三谷氏のシナリオが常人に理解できないわけではない。三谷氏は我々普通の人間のことを、いや普通でない人も含めて様々な人間を徹底的に観察し知り尽くした上でシナリオを書いている。全編をモノローグのみで通した形式、そのモノローグを現代語で語らせたアイデアは斬新である。しかもその斬新な手法によって時代劇が台無しになるどころか、より登場人物の心情を微細に奥深く感じ取ることができるのだ。すばらしい。