佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『父親』(荒畑寒村 1915年 「新潮文庫・日本文学100年の名作・第一巻 1914-1923 夢見る部屋」より)

新潮文庫・日本文学100年の名作・第一巻 1914-1923 夢見る部屋』を読んでいます。

新潮文庫創刊以来の100年間を代表する名作を精選して収録! 小説アンソロジー決定版。

第一次世界大戦が勃発し、関東大震災が発生――。激動の10年間に何が書かれていたのか。荒畑寒村「父親」/森鴎外寒山拾得」/佐藤春夫「指紋」/谷崎潤一郎小さな王国」/宮地嘉六「ある職工の手記」/芥川龍之介「妙な話」/内田百閒「件」/長谷川如是閑「象やの粂さん」/宇野浩二「夢見る部屋」/稲垣足穂「黄漠奇聞」/江戸川乱歩二銭銅貨」。 

 

 

 

冒頭を飾るのが荒畑寒村の『父親』です。

社会主義運動にかかわり投獄されたりする息子を持つ父親を描いた作品。当時の社会を包み込む独特の雰囲気は良く伝わってきました。ただしそれは「現代に生きる私にとって」という意味で、この一編が書かれた当時としてこの小説にそれほどの意味があったのかというと些か疑問です。文章もさして良いようには感じませんでした。この小説に価値を見いだすとすれば、自らが社会主義運動に身を投じ投獄された者として、その父親の心情を描いたという点か。

「日本文学100年の名作」と銘打った文庫だけに気負い立って読み始めましたが、巻頭を飾るこれはハッキリ言って期待外れでした。だいいち”荒畑寒村”というペンネームをつけるセンスが許せません。残念。

2015/09/06 兵庫県美方郡香美町香住・夕香楼しょう和にて