ウェルズの日記

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『ある職工の手記』(宮地嘉六 1919年 「新潮文庫・日本文学100年の名作・第一巻 1914-1923 夢見る部屋」より)

新潮文庫・日本文学100年の名作・第一巻 1914-1923 夢見る部屋」に収録された『ある職工の手記』を読みました。

 

 

おそらくプロレタリア文学の草分け的存在として選ばれたのでしょう。時代背景が的確に描かれ、継母から疎んじられ家出し職工として生きる主人公の心情が的確に描かれている点は素晴らしい。しかし、短編を締めくくる次の二行はなんでしょう。

「其の翌年、私は或る同志に加わる為めに関西へ飛び出した。それからのことは、あらためて他日発表するであろう。」

小説で何らかの主義主張を現すことを否定はしない。むしろそれがなければ小説を読む意味は半減するだろう。しかしこの締めくくりは何たることか。小説としての趣が台無しです。読んでいた私の心は一気に冷え込んでしまった。興ざめとはこういうことを云うのであろう。これだから私はプロレタリア文学が嫌いなのだ。