佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『天切り松 闇がたり 第四巻 昭和俠盗伝』(浅田次郎・著/集英社文庫)

『天切り松 闇がたり 第四巻 昭和俠盗伝』(浅田次郎・著/集英社文庫)を読みました。

まずは出版社の紹介文を引きます。

時は昭和九年。関東大震災から復興を遂げ華やかなモダン東京を謳歌したのも束の間、戦争の影が徐々に忍び寄っていた。ついに寅弥が我が子のようにいとおしんできた勲にも召集令状が届く。国の無体に抗おうと松蔵らが挑んだ企みとは? 激動の時代へと呑みこまれていく有名無名の人々に安吉一家が手をさしのべる五編。人の痛みを、声なき声を、天下の侠盗たちが粋な手並みですくいとる。 

 

 

天切り松闇がたり〈第4巻〉昭和侠盗伝 (集英社文庫)

天切り松闇がたり〈第4巻〉昭和侠盗伝 (集英社文庫)

 

 

日本人の気質の美しさ、上品さを支えていたものとして「やせ我慢」がある。これは本書の解説にすまけいさんが書いていらっしゃったことだ。全くその通りだと思う。日本人に限らず「かっこよさ」に繋がる基本態度は「やせ我慢」だといって良いだろう。というのは世界にあまたあるハードボイルド小説の主人公に共通する美質が「やせ我慢」だからだ。目細の安吉親分、振袖おこん、説教寅弥、黄不動の栄治、百面相の常、天切り松と登場人物全てがとびっきりカッコイイ。これら登場人物皆が一つの規範を持って生きている。それは金より、命より、筋目を通すことを大切にするということ。つまり損得で動かないということだ。