『弱者が強者を駆逐する時代』(曽野綾子・著/ワック)を読みました。
これまで曽野綾子氏を読んでこなかった。本棚に単行本『いま日は海に』が一冊あるのみである。しかし新聞紙上や雑誌上での曽野氏の言説にある種のシンパシーを感じてきてもいた。本書の題名もこのところしばしば私が感じる世の中の胡散臭さを端的に言い当てている。
出版社の紹介文を引きます。
雑誌『WiLL』に連載されたエッセイをまとめた本です。
「実に現代は、弱者が強くなった時代とも言える」
「気の毒だと思われている人を批判したり、まだそんな程度では大して気の毒ではないということは許されない時代」
「一般に音痴は大きな声では歌わないのが礼儀だろう」
「七十、八十にもなって、”年寄りが安心して暮らせる生活を”などというたわけたことを言っていて、それでも通るのが、日本の弱くて強いお年寄りなのである」
「自分がお金を持っていなければ、他人より貧しい暮らしをしなければならない、と世界中の人が思っている。しかし日本人は、自分が働かなくても、誰かが、三食つき、個室、風呂というレベルの暮らしを与えるべきだと信じ切っている」
こうした言葉がいちいちあたりまえのことであって、甘ったれたことを臆面もなく放言し羞じることのない今の日本の状況こそがおかしいのだと改めて思う。