佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

致知2016年2月号を読んで アウン・サン・スー・チー もんじゅ

致知』に渡部昇一氏の「歴史の教訓」という連載記事がある。2016年2月号にアウン・サン・スー・チー氏に関するものと高速増殖炉もんじゅ」に関するものが書かれた。

まず、アウン・サン・スー・チー氏に関する記事では、ビルマのイギリス植民地支配の狡猾さと苛烈さとミャンマー軍事政権発足のいきさつにふれ、ミャンマーの歴史を知っていれば軍政は必然であり、軍政を軽々に圧政と断じアウン・サン・スー・チー氏率いるNLD(国民民主連盟)の総選挙勝利を自由と民主主義の勝利とばかりに短絡的に歓迎する向きに疑問を呈している。まったくもって慧眼である。軍事政権=悪玉、民主化運動=善玉というステロタイプなものの見方しかできない日本のマスコミにはまったくがっかりするほかない。かつて残酷な植民地支配を行ったイギリスと繋がっているスー・チー氏に懐疑的な見方をする人も多いだろうに、そうした意見がほとんどテレビや新聞紙上に出てこないのは不思議なことだ。日本において渡部氏のような論客は貴重な存在だ。

もう一点、「もんじゅ」に関して渡部氏は「国が平和である根本はエネルギーと食料の自給だ。もんじゅはエネルギー問題を最終的に解決する技術である。だが、もんじゅは現在、運転を停止したままなのだ。これでいいのか。いまこそ政治家が肝っ玉を発揮する時ではないのか」と述べている。核燃料サイクルが技術的に未来永劫不可能なものなのか、それとも使用済み核燃料をリサイクルできる技術は可能なのか、それについて私の知識の及ぶ範囲ではない。その点についてなんとも判断のしようはないが、少なくとも「核エネルギー」を短絡的に、あるいは情緒的に「悪」と決めつけ、原子力利用について冷静な議論ができない昨今の状況は改めるべきだろう。渡部氏のような主張は真剣に議論検証されるべきだろう。