志村ふくみさんのエッセイ『語りかける花』を読んでいます。私が参加している読書会『四金会』の今月の課題書です。その中に「さむがりやのサンタ」という一文が収められています。志村さんがお孫さんに『さむがりやのサンタ』という絵本を、請われるままに何度も何度も読んであげるという話です。志村さんはこの本のことを「あちこちに愛情が光っている。サンタさんのまわりにはほんものの湯気が立っている」と評していらっしゃる。読んでみたいなと思っていたところ、その読書会に持ってきてくださった方があり、すぐその場で読ませてもらいました。
この本のサンタは「なんてこったい、いやなゆきだよ、まったく!」「えんとつなんてなけりゃいいのに!すすだらけになっちまった。」などとブツブツ言いながらクリスマスイブの仕事をします。おまけに子供の"貢物"に「へん、またジュースか」などと悪態をつく始末。嫌々仕事をしているようで、実は楽しそうに見えるところがなんとも味わい深い。決して聖人ではなく人間くさいサンタがとても魅力的です。
人によっていろいろな受け止め方があると思いますが、私は、年をとって「やれやれ」などと言いながらも周りの役に立てる幸せを描いていると解釈しました。志村さんが「やれやれ」と言いながら何度でもお孫さんにこの本を読んでいらっしゃる姿を想像するだけでほほえましく、幸せな気分になります。
さむがりやのサンタ (世界傑作絵本シリーズ―イギリスの絵本)
- 作者: レイモンド・ブリッグズ,さむがりやのサンタ,すがはらひろくに
- 出版社/メーカー: 福音館書店
- 発売日: 1974/10/25
- メディア: ハードカバー
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