ウェルズの日記

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『ダチョウは軽車両に該当します』(似鳥鶏・著/文春文庫)

 似鳥鶏・楓ヶ丘動物園シリーズ第二作である。

 まずは出版社の紹介文を引きます。

県民マラソン大会のコースを駆け抜けてくるのは「ダチョウだって?」―そして発見された焼死体。捕獲したダチョウと被害者とをつなぐものとは?キリン飼育員・桃くんにツンデレ女王・鴇先生、変態(?!)・服部くん、アイドル飼育員・七森さんら、楓ヶ丘動物園の怪しく愉快な面々が活躍する動物園ミステリー第2弾!

 

 

 前作『午後からはワニ日和』を読んだ評価は100点中60点といったところ。キャラクターが魅力的で楽しめたのだが、ミステリーとしてはちょっと物足りなさを感じたというのが正直なところである。それでも第二作を読もうとするには訳がある。おそらく似鳥氏は『午後からはワニ日和』を書いた時点でシリーズ化を目論んでいたものと思われる。というのも第一作の中で獣医の鴇先生が暴力団関係者と思われる連中を相手にぶち切れて暴れ回るシーンがあるのだが、そのときに口走っていた男に対するトラウマ的怒りの原因が明かされていないのである。鴇先生はかなり魅力的なツンデレ・キャラなので、その鴇先生の過去に何があったのかがものすごく気になる。この謎は第二作以降できっと明かされるに違いないのだ。加えて鴇先生の年齢も気になる。主人公・桃本と恋愛関係に発展していくのかどうかも含めて気になりまくりなのだ。最初からシリーズ化を目論んでいたのなら、第一作はウォーミングアップとしてかるく流しておいて、第二作あたりからトップギアにして突っ走るという展開も想定できるというもの。

 突っ走ると言えば第二作のタイトルが『ダチョウは軽車両に該当します』となっており、これはおそらくダチョウが公道を走るという事件が発生するのだろうなぁと想像しながら読み始めた。ダチョウが軽車両に該当するというのは冗談では無く、どうやら本当の事のようです。法律上、馬や牛、ロバなどに乗って公道を走る場合、それらは軽車両扱いになるらしいのだ。であればダチョウも、もしそれに乗るとなればおそらく軽車両に該当するに違いないのだ。このあたりは実際に警察署に行って交通課の美人婦警さんに訊いてみたいところだ。「ダチョウに乗って走ろうと思うのだが、もちろん免許は必要ないよね。結構スピードが出そうなんだけど、スピード違反はあるのないの? 道路の左端を走らなければならないの? それとも真ん中を走って良いの? 走行中、ウンチをしてしまったら軽犯罪になるの? ダチョウにおいて整備不良を問われることはあるのか?(栄養不足、調教不足など)」 他にもいろいろ訊いてみたいことはあるが、あまりしつこく質問すると逮捕されそうだ。それにしても、ここまで考えると私の頭の中は???だらけである。亀に乗った場合も軽車両なのだろうか。亀は低速だから人が乗っていても歩行者扱いで良いのではないか。浦島太郎は亀に乗って竜宮城へ行ったが、そのときの亀は船舶法の規制を受けるのだろうか。城みちるの歌う「イルカに乗った少年」っていうのもある。イルカだって船舶と見なされるかもしれないではないか。船舶法においては船舶の定義は定められてはいないが、社会通念上の船舶を指すものと解されているという。すなわち、船舶とは、浮揚性を有し、機械力及び自力航行能力の有無は問わないが、水上航行の用に供される積載可能な構造物をいう。とすると亀は構造物とは言いがたく船舶とは見なされないことになる。もし陸上において亀が軽車両と見なされるならば、海上において船舶と見なされないのはそれこそ片手落ちというものだろう。もし亀が軽車両と見なされないのであれば、ダチョウが軽車両と見なされるのは不当なのでは無いか。著しく公平性を欠くのでは無いか。まてまて、そもそも諸外国においてはどのような扱いになっておるのだ。タイにおいてゾウは軽車両として扱われているのか。アラビアのロレンスはラクダに乗って砂漠を渡っていたが、砂漠におけるラクダも軽車両なのか。

 とにかく頭の中を「?」だらけにしながらも『ダチョウは軽車両に該当します』を読み始めた麗かな春の午後である。

 導入部はマラソン大会である。第一章のタイトルも「公道上のダチョウ」。マラソン大会のコースにいきなりダチョウが乱入という展開。いきなりダチョウが疾風の如く登場するなど、疾風怒濤の意外性の物語の幕開けである。その第一章で鴇先生の強さの魅力を示しながら、その後、第二章「業務上のペンギン」では鴇先生の過去を少しずつ明らかしていき謎の女・鴇先生というかたちで私の心を鷲づかみしてしまった。すっかり似鳥鶏氏の術中に陥ってしまったのである。この物語にはもう一人ヒロインらしき女性(いや、むしろこちらの方こそヒロインになりやすいキャラなのだが)七森さんというかわいい人が登場するのだが、もう私の心は鴇先生に行ってしまっているのだ。4人の男を相手にしての立ち回りで圧倒的に勝ってしまうほどの強さを持ちながら、時折見せる女としての恥じらい、女の部分を隠そうとしてかえって浮き彫りになるツンデレぶり。この鴇先生の魅力といったらハンパない。

 しからば鴇先生の過去、すなわち前職を辞し動物園に就職することとなったいきさつ、トラウマともなっているらしい恋愛体験の謎は解けたのか? 本作ではそのあたりが明らかになっています。そして何故ダチョウが公道を走り回っていたのかという謎にも意外な背景がありました。ここでそれをつまびらかにするわけにはいかない。ミステリ小説の謎ほど語るに値しないものはない。読むしかないのだ。

 残る興味は主人公・桃さんとツンデレ女王・鴇先生、そしてアイドル飼育員・七森さんの関係がどうなっていくのかである。はたして発展して三角関係になるのかどうか興味あるところ。次作『迷いアルパカ拾いました』を読むことにする。