佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『ひょうごの在来作物 つながっていく種と人』(ひょうごの在来種保存会・編著/神戸新聞総合出版センター)

『ひょうごの在来作物 つながっていく種と人』(ひょうごの在来種保存会・編著/神戸新聞総合出版センター)を読みました。

まずは裏表紙の紹介文を引きます。

古くからその土地でつくられ、食べ続けられてきた野菜たち。

風土に合った品種には、農薬や化学肥料にたよらない

力強さと、味に独特の個性がある――

そんな在来種の魅力を伝えるために、種を採り、栽培し、

食べ続ける人々を掘り起こしてみました。 

  

 

ひょうごの在来作物―つながっていく種と人

ひょうごの在来作物―つながっていく種と人

 

 

 著者のお一人山根成人氏(ひょうごの在来種保存会代表・顧問)とお付き合いさせていただいてもう五年以上になるだろう。月に一度はお酒を飲みながら楽しく話をさせていただいている。 在来種・地域固有種がなくなりつつある。今、畑で作られている野菜は違った両親を人工的に交配させてつくるF1品種とよばれる種からできている。F1品種は在来種に比べ収穫量や見た目、育てやすさに勝っており、市場で売れやすいため在来種・地域固有種を栽培する農家はどんどん減っているのだ。それどころか、最近ではできた種を翌季に植えても芽が出ない「ターミネーター」という種子まで生まれており、一握りの国や穀物企業による食糧支配の様相を呈しているありさまだという。本書はそんな状況に疑問を持ち「どないかせんといかん」と地道な活動をする「ひょうごの在来種保存会」のメンバーが中心となってまとめた本である。昔からその土地に伝わった作物を作り、種を採り、食べて続けてきた農家さんを紹介している。興味深いのは、そうした農家さんが高邁な理想に突き動かされて在来種を作り続けていらっしゃるのではないこと。ただおいしいから作っていらっしゃるのだ。作りやすさや見た目でなく、その作物の持つ味という本当の価値が分かる人によって種が受け継がれているのである。