佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

2016年6月の読書メーター

6月は時間的にも精神的にも余裕なく、電車移動を伴う出張もどうしても必要なもの以外は削ったので本を読む時間が少なかった。そんな中でも山本兼一氏の「とびきり屋見立て帖・シリーズ」を読み切り、近藤史恵氏の「久里子シリーズ」も読むことができた。また朝井まかて氏の直木賞受賞作「恋歌」も読み、そこそこ充実していたと満足している。

2016年6月の読書メーター
読んだ本の数:7冊
読んだページ数:2212ページ
ナイス数:1147ナイス

自転車ツーキニスト (知恵の森文庫)自転車ツーキニスト (知恵の森文庫)感想
自転車で移動するのは貧乏くさいか、カッコ悪いか? 案外そう思っている人は多い。人はお金を持つと、あるいは地位が上がると車に乗るものだ、それも高級車に乗るものだという固定観念はけっこう強固だ。別にそれを否定する気はない。そういう考え方もあるだろう。しかし私はまっぴらごめんである。たかだか1㎞~2㎞でさえ車で移動する人をみると私は悲しくなる。失礼ながら哀れにすら感じてしまうのだ。簡単なことをわざわざ大仰にしてどうする。もっとシンプルに行動したらどうだ。ハンカチ一枚を洗うのにわざわざ洗濯機を回す必要はない。
読了日:6月24日 著者:疋田智
ふたつめの月 (文春文庫)ふたつめの月 (文春文庫)感想
久里子シリーズ第二弾。今作では久里子の恋愛がひとつの味になっている。第一弾『賢者はベンチで思索する』にも登場した謎の老人・赤坂は未だ謎のまま残っている。このシリーズはこの後まだ続くのだろうか。赤坂の正体は明かされるのか。気になる。
読了日:6月18日 著者:近藤史恵

 


賢者はベンチで思索する (文春文庫)賢者はベンチで思索する (文春文庫)感想
久里子シリーズ第一弾。派手さはないがなかなか味わい深い連作集である。日常のミステリでありながら、うら若き女性主人公・久里子の成長物語でもある。近藤史恵さんの女性らしさを感じた作品でした。
読了日:6月15日 著者:近藤史恵

 


恋歌 (講談社文庫)恋歌 (講談社文庫)感想
正直なところ「序章」を読んだ段階では、これは読めたものではないと感じていた。当時の上流階級の女性の所作、言葉遣いがプンプン臭うものだから男子たる私は辟易してしまった。しかし第一章に入るとこの小説は全く別の顔を見せる。江戸の裕福な宿屋の娘と水戸藩士の恋。桜田門外の変天狗党の乱 、そして明治維新。史実とされている事柄の中に朝井氏が忍び込ませたフィクションが意外な結末を見せる。やり過ぎ感は否めないが、もう一人の登世(市川三左衛門の娘)を登場させた結末こそが幕末から明治に至る混沌に対する朝井氏の答えなのだろう。
読了日:6月11日 著者:朝井まかて


株価暴落 (文春文庫)株価暴落 (文春文庫)感想
池井戸氏お得意の金融をテーマにしたサラリーマン小説。会社とそこに働く人間の倫理を問う熱い闘いが最大の魅力だが、ミスリードを利用したミステリの要素もあり大いに楽しめる内容でした。厳しい判断を迫られる融資の現場で、信念を持って誠実に自分の責任を果たそうとする男と邪な考えと卑しい打算に流れようとする輩との闘いはいつものパターンだが、それこそが池井戸氏の小説を読むときに期待する味である。これがなければ印籠の無い水戸黄門になってしまうではないか。古本屋でふと手に取ったわずか170円の本に極上の時間をもらいました。
読了日:6月9日 著者:池井戸潤


利休の茶杓 とびきり屋見立て帖 (文春文庫)利休の茶杓 とびきり屋見立て帖 (文春文庫)感想
山本氏は癌と闘いながらこのシリーズを書き続けていらっしゃったとのこと。「利休の茶杓」で本シリーズを締めくくろうとは考えていなかっただろう。このあと不穏な政情に揺れる幕末の京都と、そこで道具屋を営む若夫婦の姿をどのように描こうと構想していらっしゃったのか。激動の世にあってもおそらくこの夫婦は幸せに暮らし、商売も繁盛したに違いないのだが、それをどこまで書こうとなさったのか。もしもお元気で生きていらっしゃれば、我々はまだまだ長く本シリーズを、そして微笑ましい夫婦の姿を楽しめたに違いないのだ。誠に残念なことです。
読了日:6月4日 著者:山本兼一


赤絵そうめん とびきり屋見立て帖 (文春文庫)赤絵そうめん とびきり屋見立て帖 (文春文庫)感想
シリーズも第三弾となり、ますます味が出てきた。真之介とゆず夫婦が力を合わせて生きていく姿が清々しい。読んでいて心が洗われる気がする。そうした気になるのはやはりゆずの存在によるところが大きいだろう。育ちのよいお嬢さんらしく諸事におおらかでありながらも凜とした様をみるに付け、自然と読み手の心が前向きになっている。邪な壬生浪・芹沢鴨や嫌らしい茶道家元の若宗匠の存在でさえ、ゆずの気が颯爽とした一陣の風となり、その醜い部分をさっと吹き払う心地がする。妻をめとらばこのような人をと夢見る姿がここにある。
読了日:6月2日 著者:山本兼一

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