ウェルズの日記

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『黒後家蜘蛛の会 1』(アイザック・アシモフ:著,池央耿:訳/創元推理文庫)

黒後家蜘蛛の会 1』(アイザック・アシモフ:著,池央耿:訳/創元推理文庫)を読みました。

人間タイプライターの異名をとるアシモフの手になる不朽の名作、全五巻の第1巻です。

まずは本の見開きに記された出版社の紹介文を引きます。

黒後家蜘蛛の会(ブラック・ウィドワーズ)>の会員――科学者、数学者、弁護士、画家、作家、暗号専門家の六人、それに給仕一名は、毎月一回晩餐会を開いて四方山話に花を咲かせていた。ところで、いったん話がミステリじみてくると会はにわかに活況を呈し、会員各自が素人探偵ぶりを発揮する。ところが最後に真相を言い当てるのは、常に給仕のヘンリーだった。安楽椅子探偵の歴史に新しい一ページを書き加える連作推理短編集。SF界の巨匠アシモフが自信満々、読者に挑戦状を叩きつける――さあ、あなたもミラノ・レストランに出かけて推理の競演に参加されよ!

 

黒後家蜘蛛の会 1 (創元推理文庫 167-1)

黒後家蜘蛛の会 1 (創元推理文庫 167-1)

 

 

 アシモフといえばSF。彼が確立した「ロボット三原則」は有名だ。もう40年も前になるだろうか、学生時代に『宇宙の小石』を読んだのが懐かしい。しかし、アシモフはまた優れたミステリーも書いていたのだと知り、二年ほど前に黒後家蜘蛛の会シリーズ全5巻を買いいつ読み始めようかと楽しみに本棚に置いていたのだ。今、読む気になったのに特段の理由はない。たまたまそういう気分だった、そういうことだ。

 さて、エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジンEQMM)に載せられた短編の数々の出来たるや、実にイイ。まず、物語の舞台設定が良い。ニューヨーク・マンハッタンの架空のレストランにおいて毎月開催される女人禁制ディナー、出席者は6人の会員と1人のゲスト。会の名を「黒後家蜘蛛の会(the black widowers)」と名づける。各メンバーは互いに「ドクター」と呼び合う。メンバーはメンバーであることによってこの肩書きを持つ。なぜか彼らが話をしていると解明のつかない謎が話題になり、ああでもないこうでもないと議論が白熱する。しかし解決が見つからず皆頭を抱え、お手上げ状態となったときに聞こえてくるのはテーブルで給仕にあたっていたヘンリーの「一言よろしゅうございますか、皆様」……そして謎は解明される。このパターンの繰り返しがなんとも楽しい。安楽椅子探偵ものとして最上の味わいだ。陰惨な殺人や暴力がほとんど無いのも好感が持てる。全5巻(幻の第6巻があるそうだが)を急がずじっくりと読んでいこうと思う。アシモフの知性に触れることの幸せをできるだけ長く味わっていたいから。