佐々陽太朗の日記

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『長距離走者の孤独』(アラン・シリトー:著/丸谷才一・河野一郎:訳/集英社文庫)

 『長距離走者の孤独』(アラン・シリトー:著/丸谷才一河野一郎:訳/集英社文庫)を読みました。10日ほど前、市川拓司氏の『ねえ、委員長』を読んだとき、作中に登場したので再読したくなった本です。

 まずは出版社の紹介文を引きます。

クロスカントリー競技会で優勝を目前にしながら走るのをやめ、感化院長などの期待に見事に反抗を示した非行少年スミス―社会が築いたさまざまな規制への反撥と偽善的な権力者に対するアナーキックな憤りをみずみずしい文体で描いて、青春の生命の躍動と強靱さあふれる表題作ほか7編収録。

 

長距離走者の孤独 (新潮文庫)

長距離走者の孤独 (新潮文庫)

 

 

 三回目の再読になります。初めて読んだのは高校生の頃、素直なエリート高校生(?笑)だった私にはピンとこなかった記憶があります。ただ、決して裕福に育ったわけではなく、かなり欠点が多く調子の悪い人格でしたのでその意味ではここに収められた短編が分からなくもなかったというところでしょうか。再読したのは30歳前後だったでしょうか。何故、読む気になったかは記憶にありません。当時、仕事に燃え、家庭的にも子どもを育て家族を大切にしていた私は、世の中の不条理や権威のうさんくささよりも自分や家族の未来に興味があったのだと思います。そんな自分にこの小説はさらにピンとこなかったはずです。今にして思えば人間として薄っぺらだったといえますが、ある意味、真っ当な生き方をしていたとも思えます。そして今回の再読です。ある程度の経験を重ね、少しはものを観てきた自分には読み応えがありました。少しは人間というものが分かってきたのかも知れません。