『天切り松 闇がたり 第五巻 ライムライト 』(浅田次郎・著/集英社文庫)を読みました。
まずは出版社の紹介文を引きます。
チャールズ・チャップリンがやってくる!!昭和七年五月、日本中が彼の来日に沸くなか、安吉一家の耳に驚くべき噂が飛び込んできた。チャップリン暗殺―。信念を持つこの稀代の芸術家を殺させてなるものか。世間を混乱させることなくテロリストの魔の手を振り払うため、いなせな夜盗たちが東京の街を所狭しと走り回る。表題作ほか全六編を収録した大人気“天切り松”シリーズ待望の第五巻。
待ちに待った『天切り松 闇がたり』シリーズの新刊。といっても今年8月には出版されていたのだ。今日まで4ヶ月ばかり読まずに放置していたとは。不覚を取ったものである。
全六夜の闇がたり。タイトルとなった「第六夜・ライムライト」ももちろん良いのだが、私の好みは他にある。一つは「第二夜・月光価千金」である。振袖おこんがめったやたらとカッコイイ。安吉への思い断ちがたく、切ない。もう一つは「第四夜・薔薇窓」。浅田氏が描く薄幸の女性は、いつだってそっと抱きしめたくなる。あぁ、もう目頭が・・・。さらにもう一つ「第五夜・琥珀色の涙」。こいつはもうダメです。目頭が・・・なんて言ってられません。通勤バスの車中でウッ!っと唸った瞬間、涙がボロボロ。かろうじて嗚咽をもらすことだけはこらえたが、溢れる涙を止めることは出来なかった。いつものことだが浅田文学への心地よい(しかし少々みっともない)敗北であった。
月光価千金といえばエノケン
♪ 美しい人に 出会ったときは
やさしく しとやかに ひざまずいて
にやにやと 笑って 手を握りなさい
大声あげず 逃げ出さないならば
「あらまあ!いけ好かない人ですわね
まあ! およしなさいましよ」
てなことを 言ったって もう大丈夫
彼女はわたしの両手を待ってます