『新版 落語手帖』(矢野誠一・著/講談社)に紹介された274席のうちの16席目は『今戸の狐』。音声のみですが三代目・古今亭志ん朝師匠で。
この方の語りは見事ですね。耳あたりが心地よい。心地よすぎてかえって物足りなく感じるくらい巧いんですね。
古典落語を聞くのに障害になるのが世の移り変わりです。たとえばこの噺にも現在では死語となった表現が少なからずあります。この噺では「隠語」「符丁」がポイントとなっていますが、そのキーワードが分からないとその面白みが分かりません。そのあたりを志ん朝師匠は枕で10分ほどの時間を割き面白おかしく教えてくれています。巧いなぁ。
隠語その1 「コツ」
サイコロはその昔、鹿の角で作られていたので「コツ」とも呼ばれた。一方、遊郭の呼び方として吉原はキタ(北)、品川はミナミ(南)、新宿はニシ(西)、千住は「コツ」と呼ばれていた。隠語その2 「キツネ」
サイコロ3個を使って行う賭博を「キツネ」と呼んだ。隠語その3 「サイ」
サイコロの略。一方、妻のことを音読みで「サイ」とも呼ぶ。