佐々陽太朗の日記

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『人形つかい』(ロバート・A・ハインライン:著/福島正実:訳/ハヤカワ文庫)

人形つかい』(ロバート・A・ハインライン:著/福島正実:訳/ハヤカワ文庫)を読みました。再読です。

まずは出版社の紹介文を引きます。

アイオワ州に未確認飛行物体が着陸した。その調査におもむいた捜査官六名は行方不明になってしまった。そこで、秘密捜査官サムとその上司、そして赤毛の美人捜査官メアリは、真相究明のため現地に向かう。やがて、驚くべき事態が判明した。アイオワ州の住民のほとんどは、宇宙からやってきたナメクジ状の寄生生物にとりつかれていたのだ。人間を思いのままに操る恐るべき侵略者と戦うサムたちの活躍を描く、傑作冒険SF。

 

人形つかい (ハヤカワ文庫SF)

人形つかい (ハヤカワ文庫SF)

 

 

 地球侵略ものSFの名作。異生物に世界を蹂躙されると考えるだけで気分が悪いのに、その異生物たるやナメクジのような形状をしており、それがまるで蛭が人間にとりつくが如く背中に張り付いて、人間の脳をあやつり乗っ取ってしまう。そしてどんどん増殖していくという不気味さがこの小説の味わいどころだ。さらに取り憑かれ乗っ取られた人間であっても、服を着てしまえば通常の人間と見分けがつかないという猜疑心と恐怖たるや半端ではない。

 この小説を読んで感じるのはアメリカらしさ。特殊機関のエージェントである主人公の英雄的行為と女性パートナーの可愛さでグイグイ読ませる。最も大切にするのは「独立と自由」であって、そのためには命を賭してでも闘うのだ。ハインラインはアメリカらしい価値観の権化です。そんなハインラインにひとつだけ抗議しておきたい。世界各地が異生物に侵略された時点で、寄生されているかどうかは裸になれば分かるということで、侵略され尽くしていない地域では裸に近いスタイルで生活することになるのだが、その時点でもフィンランドと日本はその国民性のせいで侵略を免れたとある。その国民性とは、フィンランドは二日か三日に一度は裸でサウナに入らなければ目立ってしまうせいで、日本人は平気で服を脱ぐせいでと書いてあるではないか。ハインラインさん、それ、大きな誤解ですから!