佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『小さいそれがいるところ 根室本線・狩勝の事件簿』(綾見洋介・著/宝島社文庫)

『小さいそれがいるところ 根室本線・狩勝の事件簿』(綾見洋介・著/宝島社文庫)を読みました。

 まずは出版社の紹介文を引きます。

第15回『このミステリーがすごい!』大賞・隠し玉作品です!

母を癌で亡くした大学生の白木は、遺言に従い、母が30年前に佐伯義春という友人から貰った宝石を返すため、北海道を訪れる。
しかし、母と義春が出会ったという場所のほど近くにある駅は、1日の利用者数が0人の秘境駅・羽帯。周辺に人が住む様子はまるでなかった。
東羽帯の集落出身者、ちよという老婆を探し出すも、「義春はすでに死んでいる」と教えられる。しかしその直後にちよが失踪。
さらに東羽帯では、「裏金」があると噂されており、宝探しに訪れる鉄道ファンがいるらしい。
ちよ探しに向かった白木は偶然出会った鉄道マニアのユウジロウとともに、奇妙な事件に巻き込まれていく。
ひと夏の、スリルと友情と恐怖のサスペンス劇!

 

 

 

 辛口になりますが、率直に言ってこの作品はまだ出版されるだけの域に達していないように思います。たかが一読者が偉そうなことをいうと言われるかも知れません。当の本人がそう思います。文才の無い私にそのようなことを言う資格は無いのかもしれません。しかし、年間100冊程度の小説を読んできた者からみて、そう思うのだからあながち間違いではないとも思います。私の見るところこの小説の良いところは「旅+鉄道+ミステリ」という多くの読者の欲求に応えたところ。サスペンス要素はそれなりにあります。意外な真相も用意されています。しかし、それらすべてが今一歩。とりわけ文章がいただけません。

 私にも誤解がありました。第15回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作だと思い込み期待が大きすぎたところはあります。読み終えて確認したところ「隠し玉作品」だとのこと。調べてみると二次選考までは残ったが、惜しくも最終選考に漏れた作品のようです。読者として敢えて言わせていただくと、宝島社さん、出版社として自信を持って世に出していらっしゃいますか。出版されるなら徹底的に改稿したものを出されるべきではないでしょうか。

 とはいえ、著者の意欲、サービス精神の面で好感が持て、才能の萌芽を感じました。次作が出版されれば成長のほどを楽しみに読ませていただきたいと思います。この度の辛口コメントは出版社の姿勢を問うたとご理解下さい。