佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『京暮らし 暮しの手帖エッセイライブラリー②』(大村しげ・著/暮しの手帖社)

『京暮らし 暮しの手帖エッセイライブラリー②』(大村しげ・著/暮しの手帖社)を読みました。

 まずは出版社の紹介文を引きます。

「京のおばんざい」で知られる著者が、京都の春夏秋冬の暮らしを書いたエッセイ。食べものや家の中のことなど、日常の細やかな出来事が京ことばのまま綴られている。新装版にあたってのあとがき…伊藤まさこさん

(出版社からのコメント) 1972年から雑誌『暮しの手帖』に連載。1987年『京暮し』として暮しの手帖社より刊行。

 

京暮し (暮しの手帖エッセイライブラリー)

京暮し (暮しの手帖エッセイライブラリー)

 

 

 大村しげさんは一日一日を深く味わえる方なのだろう。それも肩に力を入れず自然体で。季節の移ろいを感じ、あぁ、そろそろあれを作ろう、あれが食べたいと思う。たとえば本書を読んだ白露の候なら「きごしょうのたいたん」である。食べ物だけではない。当たり前の日々を楽しめる方といえばいいのだろうか。

 ある日ふと押し入れの奥にねむっていた信楽焼の大きな火ばちを金魚鉢にしてみようと思い立つ。居心地が良さそうな金魚たちは、冬になってもおかあさんのふところにいるような風情であたたかそうで、悠々と春を待っている。見ていると自然とうれしいなってくるといったこと。そんなことを文章に綴る。文章にするのはうれしいなった気持ちを誰かに伝えたいからである。つまらないと感じているのならばそのようなことはしない。日常の中にあるささやかなしあわせを感じることが出来る感受性がこの方には備わっている。世をはかなんだり、不平不満を並べ立てることもない。そんな心持ちならば、毎日はおだやかに過ぎつつ、しかしその日その日が新鮮だろう。大村しげさんは人生の達人である。

 良い本に出会いました。感謝。