まずは出版社の紹介文を引きます。
泣ける味、待つ味、吸う味、消える味。食材と調味料の足し算では掬いきれない、新しい味覚が開かれるとき、その裏には流れる四季と人との出会いがある。上機嫌の父がぶら下げた鮨折りで知った心地よく鼻に抜けるわさびの辛み。煮る炒めるのひと手間で、鮮やかに変貌する古漬けたくあんの底力……。時の端々で出会った忘れられない味の記憶に、美しい言葉を重ねた至福の味わい帖。
新橋「鮎正」の鮎づくし、「背越し」「うるか茄子」を食べたい。午後四時開店と同時に入る名古屋は広小路伏見角の居酒屋『大甚』で過ごす時間の幸せ、昼下がりに蕎麦屋での暖簾をくぐり、そば味噌、板わさ、焼き海苔あたりをアテに飲むお銚子一本の楽しみ、これぞおとなの味でありましょう。
ビールなら「ベアードブルワリー」のエール、駅弁なら「大船軒」の鰺の押し寿司、どぜうなら東京吾妻橋の「ひら井」、フランス料理なら東京港区の「コート・ドール」と訪れたい店は数知れず。
宿泊するなら石川県白山市の「うつお荘」に泊まって摘草料理と蕎麦をいただきたい。
家飲みなら油揚げをふくろにして、中にブルーチーズを入れて炙る。こいつは純米酒の燗でやりたい。
読みたい本もできた。古川緑波の『ロッパの悲食記』、獅子文六の『私の食べ歩き』、小島政二郎の『食いしん坊』、子母沢寛の『味覚極楽』、荻昌弘『大人のままごと』、藤沢周平『海鳴り』もちろん即時発注した。
あぁ、なんと罪作りな本であることよ・・・