佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

2018年4月の読書メーター

4月の読書メーター
読んだ本の数:13
読んだページ数:3645
ナイス数:1465

 

 四月はいろいろな意味で充実していた。まずは森下典子さんの食べものエッセイが2冊。文に懐かしい思い出が誘発されて切なくなったり、ジンと心が温まったりと、しみじみ幸せな気分に浸りました。続いてロマンチックSF短編傑作選を国内、海外それぞれ一冊ずつ。こうした古書は私の大好物なのです。中には「なんだこれは?」と全くおもしろくないものもあるが、これはと思う一編に出会ったときの幸福感といったら表現のしようのないほどうれしいものです。さらにビジネス書『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』。最近これほど内容が腑に落ちたと感じたものはない。この本を紹介下さったKさんに感謝。さらにさらに庄野潤三氏である。若き頃『プールサイド小景』でさりげない日常がいかに壊れやすいものかを描いた庄野氏が年月を重ね至った境地。穏やかでやさしく温かいどこにでもある日常はあまりにも幸せに満ち満ちており、かえって希有であって、読んでいる私はありふれた日常を大切に想い、どうかそれが壊れないで欲しいと祈りにも似た感情を持ちながら読ませていただいた。そうそう、幸せに満ち満ちたありふれた日常といえば『よつばと!』である。二年以上首を長くしていた14巻が発売されると聞き早速手に入れた。この世界観も壊れて欲しくないもののひとつだ。首を長くしていたのは「よつばと!」だけではない。『鴨川食堂』第五弾も発売と同時に読んだ。前作が昨年1月だったので一年以上待ちわびた最新作である。早くも次作が待ちどおしい。柏井先生には次作が「鴨川食堂 大変お待たせ」にならないようお願いします。(笑) 話は変わるが3月下旬と4月初旬、堺市を二度訪れ、市内を散策した。それに絡んで『黄金の日日』と『織田信長435年目の真実』を読むこととなった。本を読み、それにゆかりの地を訪れる。そしてまた本を読む。そうした読み方をするとさらに読書が味わい深いものになる。その他『神様のカルテ0』『あかね空』も私の大好きなタイプの小説であって、今後もその続編、あるいは関連書を追いかけていくつもりだ。あぁ、本の海はすべてを航海するにはあまりにも広く、人生はあまりにも短い。風の向くまま気の向くまま、一冊ずつ読み進めていくしかないのだなぁ。

 



いとしいたべもの (文春文庫)いとしいたべもの (文春文庫)感想
「たべものの味にはいつも、思い出という薬味がついている・・・・・・。」とは森下さんの言葉。本書の巻頭「はじめに」の結びの言葉です。一話一話に味と匂いの記憶が蘇ってくる気がするエッセイ。おばあちゃんの作ってくれたタケノコと里芋入りのカレーライス、おはぎ、お母さんの作ってくれたオムライス、サッポロ一番みそラーメン、おかゆ。それぞれの思い出が同世代の私の心に沁みました。食べ物を通じて見る人生の機微、家族の愛情、思いやり、切なさ、ひとつひとつの文と画がいとおしいほどです。よいエッセイに出会いました。 
読了日:04月05日 著者:森下 典子


ロマンチックSF傑作選 (集英社文庫 コバルトシリーズ 23A)ロマンチックSF傑作選 (集英社文庫 コバルトシリーズ 23A)感想
国内作家のロマンチックSFを豊田有恒氏が編纂したアンソロジー。  堺を旅していたときに町家ギャラリーで見つけた古書。こうしたタイトルの本は私の大好物であって、見つけたら即購入。300円であった。 「死を蒔く女」「ラブレター作戦」「燻煙肉(ハム)のなかの鉄」「帰還者」「キューピッド」が良い。中でも「燻煙肉(ハム)のなかの鉄」は秀逸。男女のロマンスを小説のテーマに据えたとして、このような愛のかたちをイメージする人は希有だろう。すごくカッコイイ小説だ。才能を感じる。
読了日:04月07日 著者:小松左京ほか 


世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」 (光文社新書)世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」 (光文社新書)感想
これまで正しいと思っていたことが実は間違っていたことに気付きました。まさに「目から鱗が落ちた」思いです。  タイトルは凡庸だが中身はロジカルにして明快。「分析」「論理」「理性」「科学」「帰納」「直感」「感性」「アート」「捨象」「美意識」「レトリック」「空気感」「真善美」などの言葉の位置づけと関係が説明され、それがビジネスにどう生かされどう作用するのかが解明される過程は理路整然としており、著者の意図が「ストンと己の腑に落ちる」感覚は快感と言っても良いほどだ。
読了日:04月07日 著者:山口 周


ピアノの音 (講談社文芸文庫)ピアノの音 (講談社文芸文庫)感想
書き綴られているのは何でもない日々の身辺雑記。特に肩の力が抜けた文章で、特に工夫がなされているようにも感じないし、意外性もなく感興を誘う事件もこれといってない。しかし不思議とダラダラした感じもないのだ。日々の様子が淡々と事実だけで描写され、庄野氏やその他の人物の心の動きは取り立てて現れない。生きていくうえで必ずつきまとうであろう苦しみや哀しみ、周りから感じる悪意、その他諸々煩わしいと感じるものが見事に削ぎ落とされた文章がそこにある。あるのはただ文章のみなのだ。
読了日:04月12日 著者:庄野 潤三


魔女も恋をする―海外ロマンチックSF傑作選1 (1980年) (集英社文庫―コバルトシリーズ)魔女も恋をする―海外ロマンチックSF傑作選1 (1980年) (集英社文庫―コバルトシリーズ)感想
集英社コバルトシリーズといえば少女向けの文庫レーベル。そんなものを好物だと言えば世の女性陣から顰蹙を買いそうだ。しかしこの「海外ロマンチックSF傑作選」はオジサンにも楽しめる。否、オジサンにこそ読まれるべきファンタジーだといえる。私の好みはズバリ「魔女も恋をする」と「第十時ラウンド」。どちらも甘い。しかもヒロインが”うぶ”ときている。今の世に”うぶ”な女性などまず居ますまい。。そんなことは百も承知しながらも、いるかもしれないとおよそ現実味のない夢をみてしまうのがオジサンなのだ。「きしょー」と笑わば笑え!
読了日:04月12日 著者: 


プールサイド小景・静物 (新潮文庫)プールサイド小景・静物 (新潮文庫)感想
40年ぶりの再読。「家庭の危機というものは、台所の天窓にへばりついている守宮(やもり)のようなものだ」(舞踏) この言葉にイメージされる日常に潜む脆さ。幸福は斯くも脆く壊れやすい。表層は幸せに見えてたとしても内情はさにあらず。庄野氏が『舞踏』から『プールサイド小景』、さらに『静物』を著し、その後『夕べの雲』、さらに長き年月を経て『ピアノの音』に至るまでを見たとき、氏が幸福な家庭や平穏な日常を如何に大切に思い守ってこられたのかを想像する。あたりまえであることの難しさを考えさせられた。
読了日:04月13日 著者:庄野 潤三


鴨川食堂はんなり (小学館文庫 か 38-5)鴨川食堂はんなり (小学館文庫 か 38-5)感想
第一話「親子丼」に登場する東寺にほど近い食堂は名前は変えてあるけれどあのお店ですね。昨年の11月に行きました。私はラーメンをいただきましたけれど。(笑) 第二話「焼売」に登場する植物園近くの中華料理「白雲」は柏井先生の御著書『京都しあわせ食堂』に紹介された店ではないか。確か先生のオススメは「からしそば」であった。未だ行ったことがないが、次に京都に行くときのお楽しみにしよう。注文は「からしそば600円+焼売550円」で決まり。ビールもいただきたい。しんみりした後、じんわりと心が温まるエピソード五編。
読了日:04月14日 著者:柏井 壽


こいしいたべもの (文春文庫)こいしいたべもの (文春文庫)感想
「幸せ」のかたちはいろいろあるだろう。森下さんは日常にある「幸せ」を切り取って見せてくれる。まるで「おいしいたべもの」をお裾分けするかのように。森下さんの綴るたべものの思い出、その多くは家族と過ごした時間の記憶だが、私はそこに温かく胸がきゅっとするような幸せを感じる。幸せの脆さを承知のうえで、人生を真摯な想いで大切に生きてこられたであろう著者の言葉に心温まりました。大船軒の「鰺の押寿し」を食べたい。次に東京出張したときの帰りはこれだな。いや崎陽軒の「シウマイ弁当」にすべきか。う~ん、これは迷う・・・
読了日:04月19日 著者:森下 典子


黄金の日日 (新潮文庫)黄金の日日 (新潮文庫)感想
NHKで『黄金の日日』が大河ドラマとして放映されたのは1978年の1月から12月までのこと。私が高校二年生から三年生にかけてのことであった。その前作『花神』の大村益次郎にも心躍らされたものであったが、六代目・市川染五郎が演じた呂宋助左衛門が私の中でのヒーローであった。つまり「武」ではなく「知」を武器に活躍するヒーローを私は望んでいたのだ。幼稚園、小学校と体が小さくひ弱であった私にとって、戦国の武将はおろかスポーツ選手も心の底ではヒーローにはなり得なかったのだ。室町時代、戦国時代を経済小説として描いた良書。
読了日:04月22日 著者:城山 三郎


神様のカルテ0神様のカルテ0感想
本書を読んで登場する人物のひたむきさ、ある種の優しさの根底にある考えが少しわかったような気がする。私はこのシリーズが好きだ。このシリーズに描かれる生真面目でやさしく温かい世界が好きだ。現実はそんなもんじゃない。しかし、世知辛い現実の中にも温かさや優しさは確かにある。いくら辛いことがあったとしても、生きていればきっと良いこともあるよといえるだけの素晴らしいものが人生にはきっとある。本シリーズを読めばそう言い切ってしまっても良い気持ちにさせられる。それも「本を読む」ことの効用であろう。
読了日:04月24日 著者:夏川 草介


あかね空 (文春文庫)あかね空 (文春文庫)感想
単なる立志伝に終わらず、もう一ひねりしてある。物語がなんとなく不穏な様相を呈し始めるのが二人の子どもが成長し始めた頃からだ。夫婦、親子、兄弟の間で気持ちがすれ違い、もめ事が起こり、誤解としこりが残るようになる。一旦はギスギスしかけた家族が不思議な巡り合わせでお互いの想いを知ることになり、再び家族に固い絆が生まれる。この小説は人が一緒に暮らしていくうえで相手を思いやることの大切さを教えてくれる。
読了日:04月26日 著者:山本 一力


織田信長 435年目の真実 (幻冬舎文庫)織田信長 435年目の真実 (幻冬舎文庫)感想
これまで私は「本能寺の変」について、深い考えもなくなんとなく怨恨説あるいは野心説のどちらかなのだろうと思っていた。本書を読んでみるとそれが浅はかな考えであったような気になる。本書に書かれた「本能寺の変」の真実(?)はなかなか興味深い。かといって著者の説が正しいかどうかとなると、著者以上に史実を丹念にあたっていき、そのうえで種々の仮説を立て検証していく作業が必要だろう。残念ながら私にはそんな能力も時間もない。従って私はこれ以上、歴史の迷宮に足を踏み入れることをしない。仕方がないではないか。
読了日:04月29日 著者:明智 憲三郎


よつばと!(14) (電撃コミックス)よつばと!(14) (電撃コミックス)感想
やっと発売されました。13巻の発売が2015年11月27日だったので、二年半近く待ったことになる。  発売日は4月28日(「4・2・8=よつば)って、語呂合わせしなくて良いからもっと早く発刊しろよと言いたい。  よつばは変わっていない。『いつでも今日が、いちばん楽しい日』、そんな毎日を生きている。最強の子どもだ。いつまでも変わって欲しくないもののひとつだ。
読了日:04月30日 著者:あずま きよひこ

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