佐々陽太朗の日記

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YouTubeで落語 Vol.033 『おせつ徳三郎』

 新版 落語手帖』(矢野誠一・著/講談社)に紹介された274席のうちの33席目は『おせつ徳三郎』。この噺は通すと長いので上下に分けて語られます。上は『花見小僧』、下は『刀屋』とも題されます。

 ある大店の一人娘おせつ。年頃なので婿を取らせようとするのだが、なかなか首をたてにふらない。奉公人の徳三郎と深い仲になっていると耳にした主人は、おせつの可愛がっている小僧の定吉を呼び、本当のところを教えなければお灸を据えるとおどかして問い詰める。とうとう定吉から今年の花見でおせつが徳三郎と逢い引きをしていたことを聴き出す。ここまでが上(花見小僧)。定吉が主人に問い詰められ、喋るまいとしながらもおせつと徳三郎がイチャイチャする様子をおせつの父である主人に少しずつ話してしまう。年端が行かぬ小僧・定吉がその話を聴かされる主人の心持ちを想像出来ずあれこれ話してしまう滑稽さが聴きどころ。

 下は一人娘おせつとの仲を知られたため徳三郎がひまを出されてからの話。主人はおせつに婿を取る話を決めてしまう。婚礼が整ったという噂を耳にした徳三郎は心変わりをしたおせつを恨み、おせつを切って自分も死のうと刀屋へ刀を買いに行く。これは訳ありだと見抜いた刀屋の主人が徳三郎から事情を聞き出す。徳三郎は自分のことだということは隠し、仲間のことだといいながらいきさつを話す。刀屋の主人はそれはとんだ了見違いだと徳三郎に諭す。男ならその婚礼を祝い、おせつとそのお店が栄えていくことを祈るべきだ。男なら自分の才覚で商いを成功させ、おせつ以上の女房をもらい、どうだ自分と結婚しなくて失敗したと思わせてみろというのだ。このあたりが聴きどころ。ちょうどそんな話をしているところに、おせつの店の縁者が刀屋に来て、少し金を貸してくれと飛び込んできた。祝言をまえにおせつが家を飛び出してしまったので急ぎで探し回っているという。それを聞いた徳三郎は刀屋を飛び出す・・・

 この噺は家督をめぐるしきたりや身分の違いという封建的な環境のなかでの恋愛という芝居がかった要素があるだけに聴き応えがある。近松ならば心中という悲恋として描くのだろうが、落語は二人を死なせなることなくその後を予感させる。そのあたりも落語の良いところ。久しぶりに『崇徳院』が聴きたくなります。

 『おせつ徳三郎』の上下を五代目・柳家小さんで聴きます。


名作落語144 五代目 柳家小さん おせつ徳三郎(上・下)

 

 

新版・落語手帖

新版・落語手帖

 

 

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