佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

2018年8月の読書メーター

8月の読書メーター
読んだ本の数:10
読んだページ数:2848
ナイス数:1758

 

8月の傾向としておいしい小説をおいかけた感あり。そして大好物の時空ものSF。伊吹有喜さんのBAR追分シリーズにはまった。続編が待ち遠しい。


まるまるの毬 (講談社文庫)まるまるの毬 (講談社文庫)感想
「まるまるのまり」なんのこちっちゃ? と本を手に取ると「いが」とルビが振ってある。「まるまるのいが」の意味も分からなかったが、時代物の人情小説、しかもおいしい食べ物にまつわる小説となれば私の大好物である。テイストからすると高田郁さんの『みをつくし料理帖』あるいは小路幸也氏の『東京バンドワゴン』のファンならきっと気に入るのではないか。私が気に入ったのは「愛情」が物語の主題となっているが、それがいわゆる「恋愛至上主義」になっていないところ。ほろ苦さが残るが「これでいいのだ!」
読了日:08月04日 著者:西條 奈加


BAR追分 (ハルキ文庫)BAR追分 (ハルキ文庫)感想
たまに一人でBARに行く。若いころは気後れしてなかなか開けることのできなかったBARも、年をとると逆に落ち着く場所になるから不思議だ。私が良く注文するのはジントニック。あるいはカウンター越しに目についたアイラをロックでやる。ちょっと気取ったときはギムレット。チャンドラーの小説『長いお別れ』のラスト近くの銘台詞「ギムレットにはまだ早すぎるね。」があるからだ。しかし、次にBARの扉を開けた時には”オールドファッションド”にするか”CCジンジャー”にするかと迷っている。四話の中で「父の手土産」が良い。
読了日:08月04日 著者:伊吹 有喜


山本周五郎名品館I おたふく (文春文庫 や 69-1 山本周五郎名品館 1)山本周五郎名品館I おたふく (文春文庫 や 69-1 山本周五郎名品館 1)感想
流石は沢木耕太郎氏の選んだものだけあり、どれもこれも珠玉の短編。 「あだこ」「おたふく」「ちゃん」「松の花」「雨あがる」、これらどれを取っても男は女次第。男子として生まれたからにはこうした女性と出会え連れ添えてこそ本懐といえよう。 夫婦で人生の喜びを分かち合えればこれほど幸せなことはない。たとえ苦労の多い人生であっても、それも分け合いお互いが支え合うことが出来れば辛さも喜びに変わる。なんだか結婚披露宴のスピーチのようになってしまって気恥ずかしいが、そんなことを言ってみたくなる気分である。  
読了日:08月11日 著者:山本 周五郎


京都下鴨なぞとき写真帖 (PHP文芸文庫)京都下鴨なぞとき写真帖 (PHP文芸文庫)感想
京都の名勝地とそこに実際にあるおいしい店が紹介される。そしてそこで展開される人情話が読みどころである。京都観光グルメガイドと市井人情小説の幸せな合体。京都に生まれ、京都に住み、京都を食べ歩き尽くした柏井氏ならではの見聞は正真で慥かだ。  第二話「雪の千本鳥居」が好い。年老いたおばあちゃんが一人で切り盛りする食堂は何処とは特定されていないが、京都の町中にあり地元の人からうどん屋と呼ばれているような大衆食堂。店の佇まいを想像するだに京都に行きたくてたまらなくなる。
読了日:08月12日 著者:柏井 壽


まぼろしのパン屋 (徳間文庫)まぼろしのパン屋 (徳間文庫)感想
食べ物にまつわる短編が三つ。いわゆる人情噺といって良いのだろうが、何か風変わりなものを感じる。それはヘタをすればそれが違和感となって読むことを楽しめない種類のものである。食べもので言えば、口に入れた瞬間「ん、なんだこれは?」とちょっとしたクセを感じることがあるが、それである。それがその料理の良さでもあるのだが、人によってはそのクセが気に障って箸を置いてしまう類いのものだ。そのクセは松宮氏の独特の視点に帰せられるものだが、もう一つ、文章の荒さにも起因している気がする。特に第三話は言葉の問題もあり読みづらい。
読了日:08月14日 著者:松宮 宏


オムライス日和 BAR追分 (ハルキ文庫)オムライス日和 BAR追分 (ハルキ文庫)感想
『オムライス日和』という題名に惹かれる。子供の頃、母が作ってくれたオムライス、街中の食堂で食べたオムライス、学生の頃、彼女が一生懸命作ってくれた卵がちょっと破けたオムライス、オムライスには少なからず思い出がある。いちいち人に聞かせるわけにはいかないが、私の心の奥底にある切なくも心温まる類いの思い出である。そんなオムライスに著者伊吹氏は「日和」という言葉を付けたもうた。これはもう彼の俵万智さんが「サラダ」に「記念日」を付けたに比肩する快挙と言わねばなるまい。
読了日:08月15日 著者:伊吹有喜


情熱のナポリタン―BAR追分 (ハルキ文庫)情熱のナポリタン―BAR追分 (ハルキ文庫)感想
ますますおいしい小説になってきた。シリーズが1,2,3と進んで行くに従って登場人物に厚みと深みが出てきて、どんどんその人が好きになっている。一話一話を楽しみながら、シリーズを通して主人公・宇藤輝良はシナリオライターとして成功するのか、二つ三つの恋愛の種は芽を出し育っていくのだろうかといったところに興味をもつ。そうした筋を伊吹さんはどう書いていくのか気になるところである。一話一話の短編で読者を飽きさせず、シリーズを通した筋で読者を引きつけて放さない。人気シリーズになる要素は整っている。続編が待ち遠しい。
読了日:08月18日 著者:伊吹 有喜


四十九日のレシピ四十九日のレシピ感想
父・良平と娘・百合子が亡くなった乙美の心の美しさや優しさ、他人を思いやりゆるすことのできる心の広さに気づくことで、人として大切なことに気づかされる。人を思いやることができるとき、結局は自分が幸せなのだということ、そういうことではないだろうか。論語・衛霊公十五「子貢問ひて曰く、一言にして以て終身之を行ふ可き者有りや。子曰く、其れ恕か。」を思い出す。「恕」に私も心せねばなるまい。
読了日:08月21日 著者:伊吹有喜


11人いる! (小学館文庫)11人いる! (小学館文庫)感想
萩尾望都さんのことを知らなかったのだが、森見登美彦氏の『ぐるぐる問答』を読んで、登美彦氏と萩尾望都さんとの対談を読んで興味を持った一冊。  正直なところ画は好みではない。しかしSFファンタジーとしての完成度の高さに驚嘆した。こうしたものを読むと小説にないコミックの可能性に気づく。  映画『ペンギン・ハイウェイ』を観に行かねば。  巻末の中島らもさんのエッセイ「美少年とは何者か」が良い。 
読了日:08月23日 著者:萩尾 望都


時をかける少女 〈新装版〉 (角川文庫)時をかける少女 〈新装版〉 (角川文庫)感想
再読。もともとは1980年前後に読んだはずだ。読んでいて、1970年代の高校生と2010年代の高校生の持つ感覚の違いに愕然とする。考えてみれば当時高校生だった私もずいぶんうぶであった。とはいえ思春期の若者の一途な思いは今も昔も変わらないに違いない。懐かしい感覚がよみがえった楽しい読書時間でありました。
読了日:08月25日 著者:筒井 康隆

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