佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

山の上ホテル

 久々の東京。RI会の研修が6日~7日にあり上京するのだが、考えてみれば会社の東京事務所にもしばらくご無沙汰である。加えて某出版社のI氏とそのうち一杯やろうと約束しながら果たせないでいる。というわけで、研修の前日に上京し、I氏との約束を果たし(といっても居酒屋で飲むだけなのだが)、東京事務所の面々の顔を見ておこうということとした。

 宿を取ったのは「山の上ホテル」。作家、三島由紀夫川端康成池波正太郎など、数々の文豪に愛されたときいている。評判の高い朝食目当てでもある。以前から一度泊まってみたいと念願していたが、上京する機会が少なく、たまの機会に予約しようとしてもいつも満室だったのだ。
 アール・デコ調の建築が歴史を感じさせる。フロントの横にあるライティングデスク。池波正太郎も座ったとか。

 部屋のキーもクラシカル。部屋数も三十数室しかないようで落ち着いている。

 部屋に入りしばらくするとノックする音。お茶を持ってきてくれた。4階の部屋だが窓の外には庭がある。東京の真ん中という気がしない静かな佇まいである。

 何よりもうれしいのが神田神保町がすぐ近くだということ。今夜は某出版社のI氏と蕎麦屋で一杯やるのだ。待ち合わせに時間が少し合ったのでぶらり神田神保町まで歩き、古本屋をのぞいてみる。懐かしい雑誌、レコード、本、本、本・・・。旅先で本を買うと重い荷物になるのだが思わず三冊買ってしまった。辛抱できるはずがないではないか。 

 I氏と蕎麦屋蕎麦屋については別に書く)で懇親を深めたあとはホテルにもどりバーノンノンをのぞいてみた。英国調のバーで、酒の種類はさほど多くない。アンティークな雰囲気が空間に落ち着きと世俗との隔絶感をもたらしている。まずはじめはオリジナルカクテル「ザ ヒルトップ」をお願いする。ウォッカベースでリンゴの甘み、口当たりの良いカクテルでした。飾らない清楚なたたずまいも良い。

 2杯目は「オールドファッションド」。ロックグラスに角砂糖を入れビターズをかける。氷を入れウイスキーを注ぐ。ウイスキーはバーボン、メーカーズマークを使っていました。以前からいろいろなバーで赤い封蝋のボトルトップを見て気になっていた酒です。私はバーボンはフォーローゼズを愛飲しているのでこれまで飲んだことがない。バーテンさんからこの封蝋は手作業だから、ボトルそれぞれに形が違うと教えていただいた。

 3杯目はスコッチ。”Royal Household”です。ちなみに定冠詞 ”The" はついておりません。もしついているものがあったとしたらえらいことでしょう。ボディーはどちらかというと軽めで飲みやすい。ブレンデッド・ウィスキーですから当然ですが非常に飲みやすいです。何故「ロイヤルハウスホールド」という名なのかは、この酒を扱っている会社HPの紹介文を引いておきます。

1897年、当時最も多くの原酒を保有していたジェームズ・ブキャナン社は、英国王室によって皇太子(後のエドワード7世)専用のスコッチウイスキーを造るよう、勅命を受けました。
ブキャナン社は厳選された貴重な原酒を門外不出の技術によってブレンドし、英国王室にふさわしい 品格と気品に満ちたスコッチを見事に造り上げました。
これがロイヤルハウスホールドです。 
そのため、英国でも限られた場所でしか飲むことが許されていませんが、
英国王室との友好な関係により日本では特別に飲むことが許されています。
絹のようになめらかで繊細な味わいは唯一無二のスコッチとして完成されており、英国王室と日本の人達を魅了し続けています。地域:スコットランド、英国 設立:1897年

 ゆるやかなカーヴを描く木製のカウンター、わずか九席しかないバーでバーテンダーさんと一対一で酒に関する話をしてゆっくりと飲ませていただきました。一番端っこの席には三島由紀夫が腰掛けていたとか。 

 一夜明けて、楽しみにしていた朝食。これはいわゆる日本の正しい朝食ですね。席についてすぐに持ってきてくれたほうじ茶がうまい。他のホテルに比べて少し長めに待つ。新聞を読みながら待っていると出てきました。どうやら秋刀魚を焼いていたようです。焼きたての芳しい香りが鼻をくすぐります。小鉢にいろいろなおかずが盛られているのが楽しい。ついついごはんをおかわりしてしまいます。漬物がきちんとおいしい。添加物を使ったようなニセモノを出すホテルが多いが、こうしてきちんとしたホンモノの漬物を出すところが評価の高いところだろう。

 いろいろな意味で満足できるホテルでした。また泊まりたいと思います。