<YouTubeで落語>
『新版 落語手帖』(矢野誠一・著/講談社)に紹介された274席のうちの44席目は『掛取万歳』。別の名を『掛取り』、『掛万』、『浮かれの掛取り』。
噺は大晦日の長屋が舞台。ツケの回収(掛け取り)にやって来る業者と、相手の好きなものに合わせた形で撃退しようとする主人公とのコミカルなやりとりがなんとも楽しい。
これは名人三遊亭圓生で聴きたいですね。演者の力量によっていろいろな形にあつらえるようですが、圓生師匠のは狂歌に凝っている大家、けんかっ早い魚屋、浄瑠璃好きの大坂屋、芝居好きの酒屋の番頭、三河屋には三河万歳の太夫とフルバージョンですね。掛け取りの相手次第で器用に追い払うやりとりは芸能としての格調も高く聴き応え抜群です。
演者を選ぶ大ネタですが、聴衆にもそれなりの素養がないと本当のおもしろ味がわからない。一昔前の日本人のほうが文化レベルが高いと感じる。特に芸能に関してはそう言えるだろう。これからは圓生師匠のように演じることができる噺家はおそらく現れないのではないか。噺家の語りと聴衆の反応がぴったり合わさってこそ興が乗るというものだ。
私は大晦日にはいつも『芝浜』を聴くことにしていますが、今年の大晦日はもう一つ『掛け取り』も聴くとしますか。