佐々陽太朗の日記

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『ある日どこかで』(リチャード・マシスン:著/尾之上浩司:訳/創元推理文庫)

ある日どこかで SOMEWHERE IN TIME』(リチャード・マシスン Richard Matheson:著/尾之上浩司:訳/創元推理文庫)を読みました。

 まずは出版社の紹介文を引きます。

 【世界幻想文学大賞受賞作】
あと半年足らずの命と診断された脚本家リチャードは、旅の途中、サンディエゴのホテルで、女優エリーズの色あせたポートレイトを目にした。恋におちた彼は、彼女に一目会おうと1896年への時間旅行を試みる。映画化・舞台化され、今もなお熱狂的な人気を博する傑作ファンタジイ。解説=瀬名秀明

 

ある日どこかで (創元推理文庫)

ある日どこかで (創元推理文庫)

 

 

 時空を超えた恋愛ものであります。そしてそれは私の大好物でなのです。時空を超えた恋愛ものの名作はたくさんあります。『夏への扉』(ロバート・A・ハインライン)、『ライオンハート』(恩田陸)、『たんぽぽ娘』(ロバート・F・ヤング)、『ジェニイの肖像』(ロバート・ネイサン)、『美亜に贈る真珠』(梶尾真治)、『緑のベルベットの外套を買った日』(ミルドレッド・クリンガーマン)、『時をかける少女』(筒井康隆)、『満月』(原田康子)、『長持の恋(短編集・「ホルモー六景」第6話)』(万城目学)、『君の名残を』(朝倉卓弥)、『蒲生邸事件』(宮部みゆき)、『愛の手紙』(ジャック・フィニィ)などなど。

 本作『ある日どこかで』の著者リチャード・マシスンはジャック・フィニィのファンだそうである。そのことは巻末の瀬名秀明による解説に次のように記されている。

 「私が好きなファンタジー作家は、ずっと長いことジャック・フィニイだよ」とマシスン自身が語っている通り、確かに本書はフィニイの名作『ふりだしに戻る』(一九七〇)の本歌取りである。時を隔てた愛の物語だ。

  期待に違わぬ美しい恋物語。主人公リチャードの想いが通じて叶ったエリーズとの逢瀬。その刹那の甘美な幸福感と想いとは裏腹に再び元の時代に引き戻された哀しみ。その余韻がたまらなく切ない。リチャードが一枚のポートレイトを見てエリーズに一目惚れしてしまってから、想いが通じでタイムトラベルが叶いエリーズに出会うまでが冗長だっただけに、出会ってからの感情の起伏が際立つ。もうこうなると、イライラさせられた物語の序盤も、ひたすら自己暗示をかけて念じ続けることでタイムトラベルするという強引な展開もどうでも良くなり、一気に気分が盛り上がる。楽しませていただきました。

 是非、映画も観てみたい。友人K君が褒めていたサウンドトラックもきっと楽しめるに違いない。