佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『四百三十円の神様』(加藤元・著/集英社文庫)

『四百三十円の神様』(加藤元・著/集英社文庫)を読みました。

 まずは出版社の紹介文を引きます。

 

 伊集院静氏、角田光代氏から絶賛された『嫁の遺言』から5年。「ちいさく、みみっちく、弱くてずるく、それでいてたくましい、人の姿と営みをあますところなく書いていく作家」(角田氏)と評された、加藤元が満を持して放つ珠玉の短編集。挫折しかけている大学野球選手、落ちぶれて孤独に老いていくアウトロー、母に捨てられ祖父に育てられた女……彼らに起こる小さな奇跡が、あなたの心に小さくとも暖かい灯りをともす。


「四百三十円の神様」
子供の頃からプロ野球になるという夢を追い続けてきた大学野球の大型遊撃手。ケガでプレーすることを断念し、友人の代理で入ったバイト先の牛丼屋で起こった小さな奇跡が、青年の心にほのかだが確かな灯りをともす。
「あの川のほとりで」
父から引きついた割烹を切り盛りする初老の男。妻との間にはすきま風が吹いて、口論が絶えず、息子たちとの関係も微妙な今日この頃。疲れた頭と身体を癒そうと釣りに出かけた渓流の河原で、すっかり忘れ去っていたが、心の奥底で最も会いたかった人に出会う。
「いれずみお断り」
肩を怒らせ、社会を斜めに押し切るように生きてきたアウトローが、年をとってすっかり落ちぶれた――そんな老人と病気の子猫を通してかかわってしまった獣医。迷惑しか被っていないと思っていたのに、その孤独な死を看取ったとき、思いもしなった感情が噴き出す。
「腐ったたぬき」
同級生に誘われて参加した高校の文芸部の「研究会」という名のディスカッション。今回の題材はなんと『文福茶釜』。繰り広げられるのは、曲解の嵐、荒唐無稽、抱腹絶倒のバトルロイヤルだった!?
他に「ヒロイン」「九月一日」「鍵は開いた」の三編を収録。

 

 

四百三十円の神様 (集英社文庫)

四百三十円の神様 (集英社文庫)

 

 

 初読みです。加藤元氏は名前から男性だろうと思っていたのですが、読んでみると女性でした。なかなか味わい深い短編集です。注目株ですね。なかでも「四百三十円の神様」と「あの川のほとりで」は良い。逆に「九月一日」は好みではない。もともと私は「九月一日」が嫌いだ。もっとも私はこれまで「九月一日」が好きだと言った人に出会ったことがない。