佐々陽太朗の日記

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『羽州ぼろ鳶組Ⅷ 玉麒麟(ぎょくきりん)』(今村翔吾・著/祥伝社文庫)

羽州ぼろ鳶組Ⅷ 玉麒麟(ぎょくきりん)』(今村翔吾・著/祥伝社文庫)を読みました。
 まずは出版社の紹介文を引きます。

「あいつを見捨てる俺を、俺は許せねぇ」豪商一家惨殺と火付けの下手人とされた仲間を救うため、ぼろ鳶組が江戸を駆ける!

【あらすじ】 侍火消にして府下十傑に数えられる剣客、新庄の麒麟児と謳われた《ぼろ鳶組》頭取並鳥越新之助は、闇に堕ちたのか?豪商一家惨殺及び火付けの下手人として手配された新之助は、一家の娘を人質に逃走を続け、火盗改、江戸の全火消の包囲を次々と打ち破っていく。一方幕府の命で動きを封じられたぼろ鳶組頭取松永源吾は、仲間のため、己のため、ある決意を胸に立ち上がる!

 

 

玉麒麟 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫)

玉麒麟 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫)

 

 

 

 満を持していよいよ鳥越新之助が主役に登場。と言っても豪商一家惨殺及び火付けの下手人として逃走し失踪するというとんでもない展開。窮地に追い込まれながらも一人で立ち向かう新之助とそんな新之助を信じてなんとか真相を突き止めようとするぼろ鳶組の面々。いや新之助を信じて疑わないのは他の火消も同じ。若き日の長谷川平蔵鬼平)の探索も冴え、事件の真相に迫っていく。失踪中の新之助を描く場面、何が起こっているのかわからないまま事件を探り新之助を助けようとする火消したちや平蔵を描く場面、それぞれをカットバックの手法で描いたは見事。

 見事と言えば深雪の心意気と覚悟がすばらしい。やはり本シリーズは「ぼろ鳶組シリーズ」でありながら「深雪シリーズ」でもある。いずれ深雪とその人脈がらみの物語も描かれるに違いない。

 題名となった「玉麒麟」は『水滸伝』の登場人物・盧俊義の渾名。今村翔吾氏の水滸伝リスペクトが感じられる。そういえば好漢たちが集結し悪に立ち向かうという本シリーズの展開も『水滸伝』の壺を押さえている。

 本筋ではないが武蔵と水穂が文のやりとりをしているエピソードが差し込まれている。武蔵の恋愛フラグはたったままだ。武蔵の恋のゆくえはひょっとして次巻か?