佐々陽太朗の日記

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『深川駕籠 花明かり』(山本一力・著/祥伝社文庫)

『深川駕籠 花明かり』(山本一力・著/祥伝社文庫)を読みました。

 まずは出版社の紹介文を引きます。

満開を迎える深川大横川の桜並木。駕籠舁きの新太郎と尚平は、庄兵衛とおよねの老夫婦を花見に招待した。余命わずかなおよねの望みをかなえるためだった。翌日、桜を楽しむ新太郎たちに、千住の駕籠舁き寅とその客が早駕籠勝負をけしかけてきた。我慢を重ねた新太郎だったが、やがて、勝負をうけることに。だが、賭け金が千両だったことから―胸のすく第三弾!

 

花明かり 深川駕籠 (祥伝社文庫)

花明かり 深川駕籠 (祥伝社文庫)

 

 

 

「深川駕籠シリーズ」第三弾。単行本は2011年に上梓されたようだ。続編の出版を探したがその様子はない。一力先生、それは酷うございます。だってこれまでのシリーズ二巻で新太郎とさくらの間に明らかに恋愛フラグがたっていたはずじゃないですか。今巻で花椿の女将・そめ乃に恋煩いをした。それはわかる。そういうこともあるだろう。しかしこれを切りに続編が無いとなると話は別だ。今巻の結末で新太郎はそめ乃への想い一応のけりを付けたかのように読める。ではやはりさくらと結ばれるのか。あるいは幼なじみのひとみとという展開があるのか。一力先生のはった伏線が回収されないままである。これはどうあっても続編を書いていただくしか無い。

 新太郎がそめ乃への想いにけりを付けたのはいささか唐突であった。そう決めた新太郎の心情がほとんど書かれていないのだ。一力先生はそれを敢えて語らなかったのかもしれない。だとすればここは自分で想像するしか無い。新太郎もそめ乃もお互いが恋煩いするほど相思の状態である。とすれば小説の成り行きを二人が結ばれるかたちにすることも可能だろう。しかしだとすれば新太郎は駕籠舁きのままという訳にはいくまい。花椿の店に入るとすれば新太郎は実家の両替商・杉浦屋の息子として入るのであれば釣り合う。杉浦屋に戻るのであればそめ乃を娶ることも可能だろう。いずれにせよ駕籠舁きは止め、相方・尚平と組み続けることはできない。おそらく新太郎はそれはできぬと腹をくくったのだろう。それでも断ち切りがたいそめ乃への想いを、花椿の奉公人が女将・そめ乃に寄せる深い想いを知ったのを切りに己の気持ちにけりを付けようとしたのだと私は解釈する。勝手な解釈だが一力先生が新太郎の心情を推し量る材料を示されないのならば独り決めするしかない。

 やはりここは一力先生に続編を書いていただくしか無い。お忙しいでしょうがなんとかお願いいたします。