『黄金雛 羽州ぼろ鳶組 零』(今村翔吾・著/祥伝社文庫)を読みました。
まずは出版社の紹介文を引きます。
英雄の若かりし日々を描く、零の物語
十六歳の新人火消松永源吾は、逸る心を抑えられずにいた。同世代には才気溢れる火消の雛たちが台頭していたのだ。そんな折、毒を吐く戦慄の炎が発生。熟練の火消すら生還叶わぬ毒煙に、若輩は出動を禁じられ…。 反発する源吾は、加賀鳶の御曹司、最年少火消頭、町火消の新星等くせ者揃いの面々と共に命を救うため立ち上がる!
火喰鳥こと松永源吾と深雪との出会いの話をいつか詳しく読みたいと思っていた。今巻で読むことができたいへん嬉しい限りである。本作で考えさせられたのは「男の値打ち」 火消しは江戸の華。鯔背な姿は人々の憧れだ。命がけの仕事に配下の者を率いるとなれば見栄を張ることも大事だろう。しかしその男がホンモノかどうかは度量のあるなしだろう。本当に大切なものは何か、ものの道理はどうか、己が力の限界、そうしたことをわきまえて一番良い結果を得るために敢えて見栄を捨てて行動する。松永重内は男だぜ。
重内が父として息子源吾に言ったひと言を記して心に留めておきたい。
「人の強さは、人の弱さを知ることだ。それを喰らって、人は強くなる」