『新版 落語手帖』(矢野誠一・著/講談社)に紹介された274席のうちの61席目は『祇園会』。別名『京見物』、『上方見物』または『およく』。
大好きな古今亭志ん生(5代目)で聴きます。しかしいくら志ん生の語りがうまくても、やはり上方訛りのセリフは難しい。映画やドラマを観ていていつも思うのだが、変なイントネーションの関西弁を聴かされるとなんだか関西が馬鹿にされているような気分になるのだ。話のスジもさほど優れたものではない。
また、噺の中で江戸者と京の者が一緒に酒を呑む次のようなくだりがある。「江戸の酒なんざ呑めまへんな。あらぁ、なんやな、剣菱七寸目? なに飲んでも、飲んでるうちに酔いが醒めて来てな。あれ、酒、水で割ってあるんと違うんかな。酒、水で割ったよりもっと薄いんがあるわ。この前聞いたら、水に酒垂らしたなんていうんが」 剣菱は伊丹あるいは灘の酒である。剣菱七寸目というのが江戸にあったのかどうか知らないが、ひょっとして間違いではなかろうか。
いずれにせよ、何度も繰り返し聴く噺ではない。知識としてこんな噺もあったなと記憶にとどめるだけにしておく。