佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『活版印刷三日月堂_星たちの栞』(ほしおさなえ・著/ポプラ文庫)

活版印刷日月堂_星たちの栞』(ほしおさなえ・著/ポプラ文庫)を読みました。まずは出版社の紹介文を引きます。

 古びた印刷所「三日月堂」が営むのは、昔ながらの活版印刷。活字を拾い、依頼に応じて一枚一枚手作業で言葉を印刷する。そんな三日月堂には色んな悩みを抱えたお客が訪れ、活字と言葉の温かみによって心を解きほぐされていくが、店主の弓子も何かを抱えているようで―。

 

([ほ]4-1)活版印刷三日月堂 (ポプラ文庫)

([ほ]4-1)活版印刷三日月堂 (ポプラ文庫)

 

 

 昨年暮れからドン・ウィンズロウの『犬の力』『ザ・カルテル』を読んできた。凄かった。流石に疲れたので『ザ・ボーダー』に行く前に心温まるものをと本書を選んだ。ただ温くなって気の抜けたコーラ状態になりはしないかという不安はあった。まったくの杞憂であった。

 古き良き大正時代の情緒の残る町並みの片隅にある昔から変わらぬ印刷所、大きな歯車のついた印刷機、壁には活字の詰まった棚、インクの匂い、そうした風情が目に浮かぶ短編小説。時代は変遷しても親子の情、人を思いやる気持ちは今も昔も変わらない。心がほっこり温まりました。

 最新の技術による印刷と活版印刷による文字の違いがわかる人は少ないかもしれない。しかしわかる人にはわかる。文字の存在感が違うのだ。マージナルゾーンが作り出すくっきりとした存在感。それが活版印刷の文字の強さである。それに文芸作品の言葉の強さが加われば、その存在感たるや尋常ではない。その言葉が、その文字が、目に入ってきた瞬間、脳が緊張する。喜びに打ち震える。それが活字を愛する者の生態である。この小説集はそうした活字中毒者の心を鷲掴みする。

 これはシリーズ全巻読まねばなるまい。

 

活版印刷三日月堂 小さな折り紙 (ポプラ文庫 ほ 4-6)

活版印刷三日月堂 小さな折り紙 (ポプラ文庫 ほ 4-6)

 
活版印刷三日月堂 空色の冊子 (ポプラ文庫)

活版印刷三日月堂 空色の冊子 (ポプラ文庫)

 
([ほ]4-2)活版印刷三日月堂: 海からの手紙 (ポプラ文庫)

([ほ]4-2)活版印刷三日月堂: 海からの手紙 (ポプラ文庫)

 
活版印刷三日月堂 雲の日記帳 (ポプラ文庫)

活版印刷三日月堂 雲の日記帳 (ポプラ文庫)

 
([ほ]4-3)活版印刷三日月堂 庭のアルバム (ポプラ文庫)

([ほ]4-3)活版印刷三日月堂 庭のアルバム (ポプラ文庫)