佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

2012-06-09から1日間の記事一覧

『月魚』(三浦しをん・著/角川文庫)

店にあるときの古本は静かに眠る。これらの本を書いた人間たちは、すでにほどんど全員死者の列に連なっている。ここに残されているのは、この世にはもう存在していない者たちの、ひっそりとした囁き声だ。かつて生があったときの、喜びや悲しみや思考や悩み…

みをつくし献立帖

『みをつくし献立帖』(高田郁・著/ハルキ文庫)を読みました。先月18日第一刷発行のできたてホヤホヤの本です。「みをつくし料理帖」シリーズ第7弾『夏天の虹―みをつくし料理帖』が上梓されたのが今年の3月15日のこと。その時、高田さんからまさかの「…

瀕死の双六問屋

それでは、失礼する。クルマをやたら洗うな。たま~に洗ってやる方がいい。洗うってことは傷つけてることでもあるんだぜ。君の大好きなTシャツのことを想い出してみろよ。きれいに洗うたびにヨレヨレになっていっちまった、あのTシャツだ。外見をきれいに…

顔をなくした男

おれは自殺を考えたことなど、絶対に、一度としてない。だが、最終的には殺されるということは、意識の深いところで受け入れている。おれを亡き者にしようと躍起になっているグループのどれかに殺されることになるのだろう、と。だが、それは馬鹿げているし…

片腕をなくした男

「プロパガンダの黄金律を忘れたのか」 チャーリーは間髪をいれずにいった。「十分な数の聴衆の前で十分な回数嘘をつけば、その嘘は真実になるんだよ」 (本書下巻P11より) 『片腕をなくした男 (上)(下)』(ブライアン・フリーマントル・著/新潮文庫)…

昭和の女優

映画は「光と影」の芸術だが、スター女優達の名作には、「昭和」の光と影がはっきりと映し出されている。闇が暗かったからこそ、光もまぶしかった。彼女らの作品を見直すと、「昭和」がそういう時代だったのがよく分かる。 (本書P244「おわりに」より) 『…