佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

「太田和彦の全国居酒屋巡礼」(太田和彦:監修 -河出書房新社-)を読む

 「太田和彦の全国居酒屋巡礼」(太田和彦:監修 -河出書房新社-)を読んだ。

 

 

太田和彦の全国居酒屋巡礼 (のれんの本)

太田和彦の全国居酒屋巡礼 (のれんの本)

 

 

 

本書は太田和彦氏が執筆したものではなく、氏の監修になる。氏の名作「ニッポン居酒屋放浪記」のような紀行文を期待して買ったとすればあてが外れたということになる。しかし、単行本(ソフトカバー): 127ページにはカラー写真がふんだんに使われ、その店の佇まいがビジュアルに伝わってくるところはワクワクさせられる。本書で名店と紹介されるのは61軒、そのうち59軒は太田氏が紹介した店なので、店選びは太田氏によると考えて良いだろう。いずれも「左利き」にはたまらない店ばかり。一度は訪れてみたい店ばかりだ。

中でも特に私が心惹かれた店を挙げてみる。

  • 味泉(東京、月島)
    灯りをともしたモダンなオブジェが看板の店。気取っていて落ち着かないのでは?との不安は無用。暖簾をくぐればカウンターの上にずらりと並んだ酒瓶。壁にびっしり貼られた手書きのお品書き、神棚。正当派居酒屋だ。もんじゃの多い月島で、地酒と、刺身を中心とした肴を出すところとジャズが心地よく店に流れているところが気に入った。
  • 鼎(東京、新宿)
    写真を見ると落ち着きのあるカウンターがあり、店内の照明が適度な「暗さ」を保っているところが気に入った。かの文豪谷崎潤一郎氏も著書「陰翳礼賛」の中で、日本人が陰翳の秘密を理解し、光と蔭との使い分けに巧みであることを礼賛している。日本文化の基本を押さえている。このような店で飲む酒が不味いはずはない。全てに心が行き届いているはずである。酒は定番が30種ほど、そのほかに月替わりのお勧め銘柄があるようだ。これも酒飲みにはうれしい。写真に写っているものを見ても「獺祭(だっさい)」(山口)、「田酒」(青森)、天狗舞(石川)、ひこ孫(埼玉)、黒牛(和歌山)と垂涎の品揃えだ。
  • 明治屋(大阪、阿倍野
    この店の売りはなんといってもその佇まい。路面電車が走る大阪阿倍野の商店街にひときわ郷愁を誘う佇まいの店がある。店内はあくまで質素、常連さんがカウンターに座っている、あくまで居酒屋らしい空間を大切にしている。あても居酒屋らしくリーズナブルなものが多く、注文すれば素早く出てくるところもうれしい。この店だけは私も実際に訪れたことがある。自信を持ってお勧めできる店である。
  • 銀平(和歌山市
    料亭を思わせる落ち着いた雰囲気の店内。カウンターに風情がある。この店はなんといっても新鮮な海の幸と山の幸だ。油目の煮つけ、天然真鯛、太刀魚天、さざえつぼ焼き、穴子醤油焼き、ウニ磯辺揚げ、活はも生肝、鯛飯など。これに旨い酒とくればもう何も言うことはない。 
  • 炉ばた(北海道、釧路)
    「炉端焼き」発祥の地として全国に知られる店。中央に囲炉裏があり、それを囲むようにコの字型のカウンターがある。カウンター席は畳敷き。こんなところで焼きたてアツアツのホッケをあてに燗酒を飲めたら・・・・。行きたい。絶対に行きたい。
  • 源氏(宮城、仙台市
    創業昭和25年。いまでは貴重な船形天井の下、コの字型のカウンター。カウンターは年季が入っていて飴色に光っている。接客は、和服にエプロン姿の女将が一人でこなす。酒を注文すると出るお通しは、1杯目が「豆鯵の唐揚げ」、2杯目が「冷やっこ」、3杯目が「メジマグロとカツオの刺身」、4杯目が「シジミ汁」、といった具合に飲み物はすべてお通し付きの料金というシステム。日本酒は「新政」が2種。小難しいことをいわず、いつもの店、いつものカウンターに座り、いつもの酒を飲む。たびたび通う居酒屋の基本形である。

以上、61店の中で特に心惹かれた店を挙げてみたが、そのほかの店もそれぞれに素晴らしい店であるようだ。一度は行ってみたい。死ぬまでにいくつ行けるだろうか?

 

 

♪本日の一曲♪

 

今日3月2日は、Jon Bon Jovi の誕生日(1962年)

 

いつもの店、いつものカウンター、いつもの酒、 Always ・・・・・・

 

Bon Jovi - Always