「ふん」
電話を切ると、自然に顔がほころんだ。
なぜか白岩は、自分の気持ちが揺れかけたとき連絡をくれる。
立ちあがって、両腕をひろげた。
ゆっくりと闇が降りている。白波もほとんど見えなくなった。
ジャガーXKRコンバーティブルのエンジンが唸る。
(本書59Pより)
『捌き屋 企業交渉人 鶴谷康』 を読んだ。浜田文人氏の書き下ろし小説である。
裏表紙の紹介文を引きます。
企業間のトラブル処理を極秘裏に請負う人間を、関西では「捌き屋」と呼ぶ。鶴谷康は絶対不可能と言われた難題を、あらゆる情報網を駆使しながら土壇場でひっくり返すことで有名な凄腕の捌き屋だ。今回彼に舞い込んだのは、神奈川県の下水処理場にまつわる政財界を巻き込んだ受注トラブルの処理。一匹浪の彼は、難攻不落の壁を突き破れるのか?
文庫本の帯には「高村薫の合田刑事、大沢在昌の鮫島刑事に匹敵する名主人公の登場!!」とのコピーがある。合田刑事、鮫島刑事ともに大好きなキャラクターだ。どちらもタイプは違うが、そのハードボイルド度はなかなかのものである。ハードボイルド・ファンの私としては、その二人に匹敵すると書かれれば読まないわけにはいかない。
読んでみた。
かなり男臭い。気負いすぎといってもいいぐらい突っ張っている。だからこそイイ。小説はこうでなくてはいけません。鶴谷康(つるたにこう)はシリーズにするだけの魅力のあるキャラクターだ。続編も読みたい。