佐々陽太朗の日記

酒、美味しかったもの、読んだ本、サイクリング、旅行など。

『フロスト気質/R.D.ウィングフィールド(著) , 芹澤恵 (翻訳)』(創元推理文庫)


 『フロスト気質/R.D.ウィングフィールド(著) , 芹澤恵 (翻訳)』(創元推理文庫)を読み終えました。

フロスト気質 上 (創元推理文庫 M ウ)

フロスト気質 上 (創元推理文庫 M ウ)

フロスト気質 下 (創元推理文庫 M ウ)

フロスト気質 下 (創元推理文庫 M ウ)

 ジャック・フロスト警部シリーズ第4弾です。こんな面白いシリーズは滅多にありません。お薦めです。

上巻背表紙の紹介文を引きます

ハロウィーンの夜、ゴミの山から少年の死体が発見されたのを手始めに、デントン市内で続発する難事件。連続幼児刺傷犯が罪を重ね、15歳の少女は誘拐され、謎の腐乱死体が見つかる…。これら事件の陣頭指揮に精を出すのは、ご存じ天下御免の仕事中毒、ジャック・フロスト警部。勝ち気な女性部長刑事を従えて、休暇返上で働く警部の雄姿をとくと見よ!大人気シリーズ第4弾

 今回も読者の期待を裏切らないというより、期待をはるかに超えて楽しませてくれました。いつものフロスト警部は本作でも健在。女性部長刑事から「まさに無神経の極み、豚にも劣る厚顔無恥」と評されています。今回も複数の事件が同時に発生しデントン警察署内はヒッチャカメッチャカというのは本シリーズのお約束どおり。フロストの下品なジョークやセクハラはさらにパワーアップ。随所で笑わせてくれます。上下巻を併せると900ページにも及ぶボリュームも途中でダレさせることなく、読み始めたら止められない止まらない。かっぱえびせんみたいな小説だ。文庫本ながら上下巻とも一冊1,155円、二冊で2,310円という値段も惜しくはない。芹澤恵さんの訳も良いです。

 このフロスト警部という主人公、全く冴えない警察官で下品、うだつが上がらないというミステリー小説の主人公にあるまじき男だが、読んで行くにつれいつの間にか肩入れして応援している自分に気付く。本作には新たに勝ち気な女性部長刑事リズ・モードも登場。登場人物のキャラクターも魅力に溢れている。R.D.ウィングフィールドという作家がデントン警察署のみんなを愛していることがよくわかる。いけ好かないキャラのマレット署長やキャシディ警部代行にすら作者の視線はやさしい。巻末の荻原浩氏の解説でR.D.ウィングフィールド氏がこの本を書いた頃には高齢であったこと、79歳でご逝去されたことを知ったのだが、人生の深みを知った老作家の人に対する温かい目であったのだなと妙に納得してしまいました。

 それにしてもR.D.ウィングフィールド氏が2007年7月31日に亡くなってしまわれたとは残念なことです。まだ、翻訳されていないフロストシリーズの作品が2作残っているそうですが、それ以上は読めないことになります。残りの2作を早く読みたい反面、読み終えてしまうのが寂しい。複雑な気持ちだ。多少、翻訳が遅れても良いかもしれない。

ちなみにジャック・フロスト警部シリーズ作品リストは次のとおり。
1.Frost st Christmas 1984年 『クリスマスのフロスト』 創元推理文庫

クリスマスのフロスト (創元推理文庫)

クリスマスのフロスト (創元推理文庫)

2.A Touch of Frost 1987年 『フロスト日和』 創元推理文庫
フロスト日和 (創元推理文庫)

フロスト日和 (創元推理文庫)

3.Night Frost 1992年 『夜のフロスト』 創元推理文庫
夜のフロスト (創元推理文庫)

夜のフロスト (創元推理文庫)

4.Hard Frost 1995年 『フロスト気質』 創元推理文庫 本書
5.Winter Frost 1999年  未和訳
6.A Killing Frost 2008年 未和訳

また光文社文庫からフロスト警部が登場する短編集『夜明けのフロスト』も2005年に発売されています。

夜明けのフロスト (光文社文庫)

夜明けのフロスト (光文社文庫)